NHK杯のフリーの演技を終えた羽生結弦選手 (c)朝日新聞社
NHK杯のフリーの演技を終えた羽生結弦選手 (c)朝日新聞社

 圧倒的な演技でNHK杯を制した羽生結弦。ショートではあわや連続ジャンプ失敗の場面を即座に修正、見事に回りきるなど、危うい場面を乗り切る「引き出し」の多さも見せた。GPファイナルではライバルとなるネイサン・チェンとの勝負が予想されるが、羽生の心の中にはそれとは別の“気になる存在”がいるという。AERA 2019年12月9日号の記事を紹介する。

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 羽生はフリーでも、新しい「引き出し」を開けた。本番直前に与えられた、6分間練習のときだ。演技冒頭に跳ぶ4回転ループの練習に集中していたが、練習終了直前に跳んだループは回転が解けてしまった。

「ループ計5本ですかね。アクセルもルッツも練習しなくて、4回転ループだけに集中しようと思ってやっていました。最後もちろんパンク(回転が解けてしまう意味)はしてしまっているんですけど。でも、曲の入り方で1回パンクできたので、こういう間違いが出るなっていうのを確認できたのがよかったと思います」

 練習でうまくいかなくても悲観せず、本番でもう一回できると前向きにとらえた。そして迎えたフリーの演技では、冒頭の4回転ループ、続く4回転サルコーも成功した。得点源と位置づけるこの二つのジャンプがそろって決まるのは、2シーズン目を迎えた「Origin(オリジン)」のプログラムで、初めてだ。

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