きっかけは昨年9月、ハラさんが当時の交際相手の男性に暴行容疑で告訴されたことだった。その後、男性がハラさんに無断で撮影したプライベートな動画を送りつけ、「芸能生活を終わらせてやる」と脅迫したリベンジポルノ疑惑が判明した。男性は有罪判決を受け、ハラさんが被害者であることが明確になったが、ネット上ではハラさんへの中傷やデマの投稿が絶えなかった。

 今年10月には、ハラさんと親しかった3歳下の歌手ソルリさんが自殺したが、彼女もまたネット上の中傷やデマによる苦しみを訴えていた。ハラさんは直後にSNSライブで「オンニ(姉)がソルリの分まで頑張って生きるから」と決意を語っていた。その後、韓国国会に悪質な書き込みを規制する通称「ソルリ法」が発議されるなど、社会的対応をめぐる議論が始まった矢先だった。

 韓国社会では昨年来、性暴力やセクハラ被害を告発する「#MeToo」運動が日本以上に勢いづいている。その一方、ネット上で女性を嫌悪する言説、女性の人権を踏みにじる言説が深刻化している。女性の著名人がネット上で中傷され、命を絶つまで追い込まれる状況を、自らの経験と重ねる韓国人の女性は少なくない。

 もともと韓国は自殺率が高く、OECD加盟国中ワーストワン(2018年)だ。ハラさんの死を伝えるネット記事の多くには、末尾に自殺予防のホットラインの電話番号が記されている。(朝日新聞ソウル支局・武田肇)

AERA 2019年12月9日号