65巻は特装版と通常版の2種類。通常版のカバーを乱太郎、きり丸、しんべヱが、特装版のカバーを六年生の6人が飾る(撮影/写真部・張溢文)
65巻は特装版と通常版の2種類。通常版のカバーを乱太郎、きり丸、しんべヱが、特装版のカバーを六年生の6人が飾る(撮影/写真部・張溢文)

「忍たま乱太郎」の原作連載が33年の歴史に幕を下ろす。生みの親である尼子騒兵衛(あまこそうべえ)さんは今年1月に脳梗塞で倒れ、現在も右手に麻痺が残る。AERA 2019年12月9日号では尼子騒兵衛さんへのインタビューを掲載した。

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 今年の1月12日、夜中に起きてトイレに行こうと思ったら動けない。脳梗塞でした。これまでも子宮筋腫、乳がん、胆石、脳動脈狭窄(きょうさく)、腰椎骨折……といろいろありましたが、今回が一番「やっちゃった」と思いましたね。「人生終わったな」と。右手右足がまったく動かないんですから。

 2カ月弱で急性期病院からリハビリの病院に移ってからも、手に力が入らなくてへろへろの線しか描けない。「連載は無理だな」と思いましたね。そのとき作業療法士の先生がA4の紙を持ってきて「4月から1年分のカレンダーを描きましょう」と。「冗談でしょ」と言ったら、本気だと。最初はしんべヱの顔したハチ1匹描くのに1日かかったんですよ。そのうち先生が、今度は大きな模造紙を持ってきたんです。「患者さんが貼り絵をするので、その下描きを描いてください」と。それで家から定規持ってきて、定規の力を借りたら、なんとかカッコのつくものができたんです。それで「漫画は無理でもイラストは続けることができるかもしれない」と。

 今回、最後のコミックスのカバーにイラストを描き下ろすことができたのも、あの無茶ぶりのおかげです。色づけは、昔働いてくれていたアシスタントさんにお願いしました。

 もともと、もう連載はキツいかなと思っていたんです。昨年還暦になりましたし……って、「くの一に年齢はない」としてきたんですが(笑)。3カ月描いて3カ月休むというサイクルで、1年間の半分は連載に費やして、仕事場の床で転がって寝る33年間だったんです。だから入院生活は快適でした。だってご飯運んでもらえるし、食べて風呂入って、ナイター見て寝て、「極楽~!」みたいな(笑)。

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