横浜─伊豆急下田間を走る「THE ROYAL EXPRESS」。2020年8月には、「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」として北海道を運行する(撮影/櫻井寛)
横浜─伊豆急下田間を走る「THE ROYAL EXPRESS」。2020年8月には、「THE ROYAL EXPRESS ~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」として北海道を運行する(撮影/櫻井寛)

 横浜と伊豆を結ぶ人気の観光列車「THE ROYAL EXPRESS」。2020年8月についに北海道の大地を走ることが決まった。全国津々浦々を走る観光列車の旅は、1万円台でもちょっとした非日常が味わえる。AERA 2019年12月2日号では、改めてその魅力に迫る。

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 ある晴れた金曜日の午前11時。多くの通勤・通学客を送り終えたJR横浜駅の7番線には、ロイヤルブルーの車体が陽の光を放ちながら静かに出発の瞬間を待っていた。

 横浜から伊豆急下田まで、JR東日本と伊豆急行の線区を走る東急が運営するクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」。車両デザインは「ななつ星 in 九州」のデザインを手掛けた水戸岡鋭治さん(72)だ。それまでの鉄道デザインではタブーとされた木を始めとする天然素材を多用し、沿線地域の素材や工芸技術を取り入れた豪華ながらも懐かしい水戸岡デザインは、多くのファンを獲得している。その水戸岡デザインの全観光列車に乗車した鉄道写真家の櫻井寛さん(65)曰く、

「ロイヤルエクスプレスは8両編成と、観光列車としては編成が長い。車内は全車両違うデザインです。水戸岡さんデザインの列車はどれも素晴らしいですが、多彩なデザインを鑑賞できる点ではロイヤルが一番です」

■トイレに黄金のパネル

 1、2号車はゴールドクラス。3号車は天井に黄金のパネルを配したマルチスペース。4号車は一両全部がキッチンカーだ。

「ななつ星やJR東日本『四季島』、西日本『瑞風(みずかぜ)』でも一両まるごと厨房ということはありません。とても贅沢です」(櫻井さん)

 7、8号車はプラチナクラスで、5、6号車はプラチナクラスのレストラン席。8号車の一部はライブラリーになっている。複数あるトイレのうち一つの車いす対応トイレは、特殊技術の「電鋳」で製作した黄金のパネルが壁一面を仕上げている。

 ザ・ロイヤルエクスプレスは1泊2日のクルーズプラン以外に、片道の食事付き乗車プランがある。移り変わる美しい車窓、空間の贅沢さ、沿線の人びとの歓迎を考えると、お得感がある。東急交通インフラ事業部プロジェクト推進グループの松田高広統括部長(48)は、こう語る。

「東急の創業者・五島慶太翁が首都圏から3時間の伊豆に、多くの方々に足を運んでいただきたいと考えて以来、地域のみなさまや他の交通事業者様と連携し、グループ全体で伊豆を盛り上げようと取り組んできました。この碧(あお)い列車に向かって多くの沿線の方々に手を振って頂いており、地域の力が結集して走る列車になってきていると感じております」

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