GUCCI(グッチ)/「動く歩道」がランウェイ。「グッチオーガズミック(オーガズムから導いた造語)」をキーワードにミニマル化。新たなステップに(写真:Steve Wood)
GUCCI(グッチ)/「動く歩道」がランウェイ。「グッチオーガズミック(オーガズムから導いた造語)」をキーワードにミニマル化。新たなステップに(写真:Steve Wood)

 今年の春夏ミラノ・パリコレクションは、従来のラグジュアリーで華やかなショーに加え、環境へのメッセージが目立った。AERA 2019年11月25日号に掲載された記事を紹介する。

【華やかなミラノ・パリコレクションをフォトギャラリーでご紹介!】

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 グレタ・トゥンベリ(16)が国連気候行動サミットで怒りの演説をした9月23日は、2020年春夏ミラノコレクションの最終日であり、パリコレクションの初日であった。

 ファッションは時代と共振し、いち早くシグナルをあげる。差し迫った環境問題を前に、ファッション業界は「サスティナブル(持続可能であること)」に本気で取り組み始めている。

 グッチはミラノコレクションで、徹底したCO2削減を実施した。招待状はFSC(森林管理協議会)の認証を受けた紙を使用、ショー会場のドアには持続可能なイベント運営であることを示すISO 20121の標識が貼られた。ショーで発生するCO2を全てオフセット(相殺)するため、招待客を含むショー関係者1人につき1本、合計2千本のミラノ市内への植樹を予定している。

 エキセントリックでカラフル、ジェンダーレスかつ退廃的な装飾美でファッションに新たな分野を切り拓いた当代きっての人気ブランドだが、20年春夏コレクションでは、派手なパフォーマンスより、群を抜いたサスティナビリティへの貢献に大きな称賛が送られた。

 太陽のプリズムを思わせるタイルを敷き詰めたプラダのショーでは、切りっぱなしのガーゼやコットンなど素朴な雰囲気の天然素材を使い、ブランドアイコンであるナイロンにはあえて目立つ形では言及していない。だが、実は伝統のナイロンバッグを持続可能な方法で供給するRe−Nylonプロジェクトを進行している。21年末までに、プラダのバージンナイロンを無限にリサイクルできる再生ナイロン「エコニール」に転換することが最終目標だ。プラダの美学である「タイムレス(時を超えて)」に紐づく取り組みと言える。

 マルニでは、7月に開催されたメンズコレクションに続き、海洋汚染に対する警鐘を表現していた。ドイツ人アーティストのジュディス・ホプフがプラスチックの廃棄物を緑の大きな葉に変容させ、トロピカルな会場装飾として用いていた。

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