「空きスペースの有効活用にもなるし、“お風呂で仕事をする”という新たなスタイルの提案にもつながると考えました」

 開店したばかりなのにすでに数人の客の姿があったが、皆風呂へ向かうらしく、湯workには誰もいない。物珍しさもあって、席を移っては座り心地を確かめたり、自撮りをして友人に送ったり。なかなか仕事に集中できない。

 1時間ほどでいったん切り上げ、風呂で汗を流すことにした。館内着に着替えて食事を済ませたら、再びワーキングスペースへ。先客が2人いたが、席数から考えると「ガラガラ」だ。仕事にもエンジンがかかってくる。夕方になると次第に人が増えてきたが、「混雑」というほどではない。月2回ほど利用しているという40代の男性に話を聞いた。

「退勤後に来て、汗を流してから2時間ほど仕事をすることが多いです。風呂ですっきりした頭で取り組むと、新たなアイデアが生まれる気がします」

 記者自身はというと、貧乏性なのか、せっかくだからと風呂には3回入り、岩盤浴も利用した。休憩スペースで仮眠もとった。7時間ほど滞在したが、実際に仕事をしていたのは4時間弱か。ただ、いいリフレッシュになった。岩盤浴で汗をかきながら原稿の構成を考えると、いつもより冴えていた気がする。仕事をしていたのは4時間でも、会社での7時間分は働けたと思うのは気のせいだろうか。(編集部・川口穣)

AERA 2019年11月25日号

著者プロフィールを見る
川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

川口穣の記事一覧はこちら