「最初にアタックしてきた花粉によってヒスタミンを分泌したとしても、抗ヒスタミン薬の服用によって既にヒスタミン受容体が薬で埋まっている状態になっていれば、症状が出にくくなります」(大久保教授)

 医療機関での治療以外にも、出来ることはまだまだある。大久保教授は「飛散量が多い時期に備え、生活や仕事の予定を可能な限り事前に調整しておくべきでしょう」と話す。

 都内のビジネスパーソンの場合、屋外で花粉にさらされる時間をどれだけ短くできるかがポイントだ。例年、花粉の飛散量が最も多いのは3月の第1週と第2週。1~2月には、可能な範囲で事前に仕事を調整し、3月前半に外回りの仕事をできるだけ入れない予定を組みたい。

 花粉の多くは山林から飛来するので、都心では、朝早い時間帯は飛散量が少ない。勤め人の場合は早めの出勤を心がけ、どうしても外に出なければならないアポは午前中に組むことで、花粉に身をさらす時間を大幅に減らせる。

 アポ入れという点では、3月前半には不要な飲み会も入れないように調整したい。花粉の飛散が少ない夜でも、にぎやかな街では車道に積もった花粉が車が通るたびに舞い上がる。酒で粘膜が充血すれば、花粉が入り込みやすくなる。翌朝の早起きも難しくなるだろう。

 生活の乱れをただすことも、1~2月にするべき重要な準備だ。年末年始は飲酒の機会も多く、規則正しい生活を守るのは難しい。そんな人も、正月明けからリセットする気持ちで朝方の生活に切り替えよう。体調を整え、免疫力を高めておくことが花粉症の予防には大事だ。

 花粉が飛ばない地域に「避難」するのも極めて有効な対策だ。実は、スギは本州から四国、九州以外にはほとんど存在しない樹木だ。つまり、北海道や沖縄、海外に行ってしまえば、スギ花粉から逃げ出せる。

 フリーランスだったり、有給休暇が消化し切れていなかったりしてまとまった休みを取れるという人は、3月前半の2週間、あるいはその一部だけでも、花粉のない世界へランナウェイしよう。もし前後にこれらの地域への出張があるなら、時期を3月前半に合わせられればベストだ。

 花粉症対策のために仕事を休むなんて──という声もありそうだが、それは大間違い。花粉症は、災害なのだ。

 そして3月。花粉の飛散シーズンになれば薬を使い、眼鏡やマスクで対策するしか手立てはなくなる。これまで見てきたとおり、朝型の生活を心がけること、不要な外出を減らすこと、眼鏡やマスクで対策を徹底することで、花粉の嵐を耐え忍ぼう。(編集部・渡辺豪)

AERA 2019年11月25日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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