最新の治療法として期待の高い抗体療法は、1月に開始するのがいいという。

 花粉の抗原が鼻の粘膜内に入ると、異物を認識する細胞が作用し、「IgE抗体」という花粉にぴったり合う抗体が作られる。抗体が抗原をつかまえて結合することで、くしゃみや鼻水など症状の原因となる物質が放出される。この結合を妨げる薬剤を投与することでアレルギー反応を抑制するのが抗体療法だ。ぜんそくなどに用いられてきた抗体治療を花粉症に応用するのは世界初になる。

 薬剤開発に携わった大久保教授は「抗体治療はインフォームド・コンセントが大事」と強調する。保険が適用されても1シーズンに数万円かかり治療費がかさむことや、抗体医療の薬剤は遺伝子組み換え技術が使われていることなどを、丁寧に患者に説明する必要があるからだ。

 薬剤の量は人によって異なるが、1~4月までの3カ月間に、2~4週間に1回の割合で数回にわけて注射で投与する。

 先んずれば花粉を制す。来春を快適に過ごすためには、今から1月までの時期にしっかりと治療しておくことが重要だ。

 1月になったら必ず注意したいのが、日本気象協会が発表する花粉の飛散状況。来春は全国的に飛散量が少なめと予想されている。油断は禁物だ。

「12月中から飛散予測に留意し、1月に入れば自分の住んでいるエリアの飛散状況をチェックし、万全の準備を整えるべきです」(大久保教授)

 重要なのは、いつもの薬物療法を、症状が出る少し前に始めることだという。これは「初期療法」と呼ばれ、多くの医療機関で奨励されている。

 では、いつ始めるのか。花粉は例年、1月上旬から飛び始める。花粉に極めて敏感な人は、このタイミングで開始する必要があるが、東京の場合、ほとんどの人は2月中旬、バレンタインデーあたりが薬物療法を始める目安だという。それより早い場合、医療機関で花粉症治療と認められず、薬を処方してもらえない可能性がある。

 くしゃみや鼻水といった花粉症の症状は、鼻や目の粘膜にある抗体に花粉が結合することで分泌されたヒスタミンなどの化学物質が、「受容体」に結合することで起きる。花粉症の治療に使われる抗ヒスタミン薬は、この受容体に結合し、ヒスタミンと受容体が結合しないようにする仕組みだ。花粉が飛んでから服用した場合はヒスタミンと薬で受容体を奪い合うことになるが、事前に飲み始めれば、受容体をしっかりふさいだ状態で迎え撃てるため、効果が高い。

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