「みなさんストイックで刺激を受けました。宮原さんのスケーティングから溢れる表現は大ファンなので、曲かけのたびに釘付けになって見ました。梨花ちゃんは、女子なのに軽々とトリプルアクセルを跳んでいて、悔しくなって『僕もやってやる』という気持ちになりました」

 何より影響を受けたのは、宇野との練習だった。

「昌磨くんとは曲かけのたびに毎回、勝負をしました。難度は違うけど、自分のベストを出せたかどうか。毎日3勝3敗くらいでした。それに昌磨くんのジャンプの練習本数が超人的で、あれだけ繰り返して跳ぶ集中力はまねできませんでした」

 今季は4回転トウループをフリーで2本入れることを目標に掲げた。シーズン初戦のネーベルホルン杯で2位。GP初戦のスケートアメリカでは、シニアの壁が高く10位だった。

「シニアの雰囲気は少しずつ掴めてきています。トップの選手と一緒に練習する機会ができて、自分より質の高いジャンプが飛び交うのを見て、すごいな、悔しいなと思ったと同時に、あそこまで行きたいという気持ちが強まりました。やはりネイサン・チェン選手のジャンプの質には驚かされました」

 11月は羽生結弦(24)と同じNHK杯にエントリーしている。

「羽生選手と一緒に滑らせていただけるだけで、何かの気持ちの変化があると思います。練習の仕方なども、じっくりと観察していきたいです」

 まずはシニアデビューのシーズン。すべてが経験になる。

「大勢のお客さんの前で滑るのも初めてですが、今のところいい緊張で楽しめています。動きの華麗さを追究しながら感情を表現して、僕にしかない演技を見せていきたいと思います」

(ライター・野口美恵)

AERA 2019年11月25日号