「しかし、誰もが、貧困と無関係にはいられません。例えば、貧困から特殊詐欺(振り込め詐欺など)に手を染める若者は後を絶ちません。直接的な被害だけではなく、犯罪をなくし、犯罪者を矯正するコストが、社会にのしかかってきます。貧困=悪ではなく、手を染めざるを得なかった背景を想像してほしい」

 本書は「17歳の君たちへ」から始まり、平易な日本語で書かれているが、石井さんは「むしろ、大人に手にとってほしい」と話す。

「若い人の貧困の理解が乏しい理由には、大人が表層的な議論しかしてこなかったという反省もあると思います」

(フリーランス記者・澤田晃宏)

■八重洲ブックセンターの川原敏治さんのオススメの一冊

『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』は、デジタルを整理することの必要性、そしてゆとりある生活の良さを教えてくれる1冊。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 生活のほとんどをSNSやスマホなどのデジタルテクノロジーに依存している現代。本書はデジタルへの依存を減らす方法を提案する。

 そのためには新たな「哲学が必要」と表現しつつ、単純にデジタル依存を断ち切ることを考えるのではなく1「趣味」「人づきあい」「仕事」など自分の本当に過ごしたい時間の使い方を最初に決める2その中でデジタルに絶対に頼らなければならない部分がどれだけ必要かをまず考える3それを元にデジタルの最適な使い方を考え、実行に移すことが必要だ──と説く。

 それでも難しいと思ってしまうが、スマホを触っていなければ、もう少し時間があるかもしれないと思うのも事実。

 デジタルを整理することが、何かと余裕がない現代人を時間的にも精神的にも、ゆとりのある生活に戻す一番手っ取り早い方法なのかもしれない。

AERA 2019年11月18日号