日頃からやっておくこと(AERA 2019年11月18日号より)
日頃からやっておくこと(AERA 2019年11月18日号より)
倒れた直後にやること(AERA 2019年11月18日号より)
倒れた直後にやること(AERA 2019年11月18日号より)

 病気やケガなどで突然入院となったとき、一人暮らしでは必要なものを自分でそろえることは難しい。家族と同居していてもすぐには対応ができない場合もありえる。日ごろからの備えが大切だ。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

【倒れた直後にやることリストはこちら】

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 あれ? 右手に力が入らない。

 都内で働く派遣社員の女性(41)が異変を感じたのは、昼食後に職場のトイレで歯を磨いているときだった。自席に戻って仕事を再開させたが、パソコンのキーボードが打てない。

「私、おかしいです」

 隣の席の人にそう言おうとしたとき、椅子から転げ落ちた。同僚の問いかけに答えたくても、思うように言葉が出ない。その後しばらく記憶がなく、気づいたら大学病院のSCU、いわゆる脳卒中集中治療室にいた。

 女性は独身で一人暮らしをしていた。両親は離婚し、父親とは疎遠。関東に住む母親は足が悪く、病院に来られなかった。入院着やタオルなどはレンタルし、洗面用具は看護師が売店で買ってきてくれた。LINEの文面の違和感に気づいた友人たちが病院を探し当てて面会に来てくれたのが倒れた6日後。その友人たちが家族に代わって、部屋からパジャマや肌着など入院に必要なものを取りに行くと言ってくれたが、女性は慌てて出勤したままの散らかった部屋をとても見せられないと拒んだ。入院中、ペットボトルの水がほしくても自分では買いに行けない。夜の食事後から朝食まで水さえ我慢した時期もあった。

「家族に簡単に頼めることも、看護師さんや友達にはどこまで甘えていいのかわからなくて」

 病気やケガなどで突然入院となった場合、本人が自宅に戻ったり、必要なものを買いそろえたりすることは難しい。混乱の中で的確に情報を伝えるのが難しい場合もある。緊急連絡先のリストアップ、保険証やお薬手帳をひとまとめにする、などは誰もがやっておく必要がある。

 冒頭の女性のように一人暮らしの場合は、より備えが必要だ。2015年の国勢調査では、全人口の14.5%、約7人に1人が一人暮らし。また、家族と同居していても、仕事や子育て介護などで余裕がなく、家族の入院のサポートが難しいというケースもあるだろう。

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