堤真一(つつみ・しんいち)/1964年生まれ、兵庫県出身。映画、ドラマ、舞台、ナレーションなど多方面で活躍。主な映画出演作に「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)、「クライマーズ・ハイ」(08年)、「孤高のメス」(10年)など多数。「一度死んでみた」が来年公開予定(撮影/岡田晃奈)
堤真一(つつみ・しんいち)/1964年生まれ、兵庫県出身。映画、ドラマ、舞台、ナレーションなど多方面で活躍。主な映画出演作に「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)、「クライマーズ・ハイ」(08年)、「孤高のメス」(10年)など多数。「一度死んでみた」が来年公開予定(撮影/岡田晃奈)
「決算!忠臣蔵」/赤穂浪士が主君の仇討ちを果たすまでにかかった「お金」に関する悲喜こもごもを描く。11月22日から全国公開 (c)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会
「決算!忠臣蔵」/赤穂浪士が主君の仇討ちを果たすまでにかかった「お金」に関する悲喜こもごもを描く。11月22日から全国公開 (c)2019「決算!忠臣蔵」製作委員会
「殿、利息でござる!」/発売・販売元:松竹、価格3300円+税/DVD発売中 (c)2016「殿、利息でござる!」製作委員会
「殿、利息でござる!」/発売・販売元:松竹、価格3300円+税/DVD発売中 (c)2016「殿、利息でござる!」製作委員会

 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

【「決算!忠臣蔵」の場面写真はこちら】

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 殿のために忠義を誓い、四十七士が仇討ちを果たす──。江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎に始まり、多くの日本人が涙してきた「忠臣蔵」。実に300本以上のドラマや映画になってきたというが、「決算! 忠臣蔵」を見たら驚く。

 本作は、大石内蔵助が実際に残した決算書をもとに討ち入り計画の実像を記した、東京大学の山本博文教授の『「忠臣蔵」の決算書』を原作に、中村義洋監督が脚本も手がけた。お家再興総予算9491万円、赤穂から江戸までの旅費72万円、討ち入りするための衣装を全員フル装備にすると966万円……。そんな数字を映像に乗せ、仇討ちをお金を切り口にして見せた、現代人も身につまされる人間臭いドラマとなっている。

 主演で大石内蔵助を演じた堤真一さんはこの脚本を絶賛。出演を決めた。

「これまで忠臣蔵といえば悲劇が一般的ですが、この作品は『忠義の忠臣蔵』ではありません。まず関西弁ですし、『なんでやねん』なんて悲劇も喜劇になってしまう(笑)。軽さは別として、仇討ちをしたのは下級武士ばかりですし、『実際はこういうことだったのかもしれないな』と思わせられる説得力がありました」

 江戸城・松の廊下で、赤穂藩藩主・浅野内匠頭(阿部サダヲ)は、かねて賄賂まみれだった吉良上野介に腹を立て斬りかかる。通常であれば喧嘩両成敗となるはずが、幕府が下した決断は吉良へのお咎めはなく、赤穂藩のお取り潰しと内匠頭の即日切腹だった。筆頭家老の大石内蔵助(堤真一)は討ち入りではなく、浅野家復活を願って残務整理に励むが、お家再興にもお金はかかる。内蔵助は幼馴染みの勘定方・矢頭長助(岡村隆史)の力を借りて、亡き内匠頭の妻・瑤泉院(石原さとみ)の持参金およそ800両(9500万円)をかき集める。だが、金の使い方を知らない内蔵助は、お家再興のためと大盤振る舞い。一方、浪人となった藩士たちは宿敵・吉良への仇討ちを勝手に計画し……。

 見どころは、赤穂藩の役方(経営担当)と番方(いくさ担当)のせめぎ合いだ。勘定方の長助をはじめ、経理担当が必死に財政をやりくりするも番方たちは金の使い方には無頓着。討ち入り衣装は赤にしよう、果ては全員フル装備で戦おうと皆勝手言い放題。内実を知る大石はさすがに気が遠くなっていく。

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