GPシリーズフランス杯では8位に沈んだ宇野昌磨。次戦ロシア杯ではどんな演技を見せるか (c)朝日新聞社
GPシリーズフランス杯では8位に沈んだ宇野昌磨。次戦ロシア杯ではどんな演技を見せるか (c)朝日新聞社

 グランプリ(GP)シリーズ・フランス杯で8位に終わった宇野昌磨選手。ショート・フリーともにジャンプのミスが響いた。GPファイナルへの出場が絶望的となった宇野選手がフランス杯当日の心境を語った。AERA 2019年11月18日号に掲載された記事を紹介する。

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 今、宇野昌磨(21)が試練の時を迎えている。グランプリ(GP)シリーズ第3戦のフランス杯を自己GPワーストとなる総合8位で終えた。宇野がシニアのGPシリーズで表彰台を逃すのは、ファイナルを含めて初めてのこと。5季連続出場を目指していたGPファイナルへの切符も絶望的になった。

 今季、宇野は大きく環境を変えた。幼い頃から指導を受けてきた山田満知子、樋口美穂子両コーチから離れ、海外も含めてさまざまな指導者に見てもらいながらシーズンを送る決断を下した。メインコーチは置かず、新たな自分の引き出しを増やすため、もう1段階ステップアップするための挑戦だ。

 フランス杯はフランス南東部グルノーブルで開催された。宇野にとって、今季のGP初戦になる。開幕前日、公式練習に臨んだ宇野は4回転フリップや4回転サルコーの練習に時間を費やした。しかし、なかなか決まらない。フリーの曲をかけた練習では、ジャンプの乱れが目立ち、本調子でないことは明らかだった。ただ、練習後の取材で宇野は「自分が思っている最低は脱した」と語り、10月のフィンランディア杯よりは状態が上向いていることを示唆した。

「やっとスタート地点に立てたなという実感があり、決してすごく調子がいいとは言いがたいですけども、ちゃんと跳ぶジャンプを跳んで、練習を積み重ねてこられたかなと思います」

 迎えたショートプログラム。冒頭の4回転フリップを決めた。勢いに乗るか、と思いきや、続く4回転トーループで転倒。3本目の「普通にやれば成功のほうが圧倒的に多いジャンプ」と自負するトリプルアクセル(3回転半)も転倒した。点数は伸びず、ショート4位発進に。

「簡単に言うと弱気になっていたところがあるかなと思います。で、トーループの失敗はまだしも、アクセルの失敗。あれはもう、跳ぶ前に完全に自分のメンタルにのまれてしまったな、と。思いっきりいけば跳べるはずなのに、思いきり踏み込めなかった。思い返せば、簡単なことのように思いますけども、試合中はその簡単なことがとても難しくなりました」

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