稲垣えみ子「近所の盆踊りデビューで白足袋を履く粋さを人生の大先輩方に学んだ」

アフロ画報

稲垣えみ子

2019/11/11 11:30

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行
浴衣も足袋も先生が貸してくださり、着付けは大先輩方が寄ってたかって。人の親切は計り知れない(写真:本人提供)
浴衣も足袋も先生が貸してくださり、着付けは大先輩方が寄ってたかって。人の親切は計り知れない(写真:本人提供)

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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*  *  *
 近所の神社の秋祭りの舞台にて人前で踊る。

 といってももちろん一人ではなく、10人ほどで盆踊り。地元の寺の夏祭りで盆踊りデビューを果たしたご縁で、踊りを教わった先生にお誘い頂いたのだ。

 たかが盆踊りとバカにしてはいけない。我らチームは月に1度とはいえ公民館で盆踊りの稽古を重ねているのだ。ついでに言えば、この稽古がおそらく主要メンバーである「人生の大先輩方」の健康を保っているのである。目眩がするワとか手術したばかりなのとか、まあみなさまいろいろある。失礼ながらある意味ヨレヨレである。でもここに来ればそれもすべて笑いと共感に変わる。仲間がいるとは誠に強力なことである。

 そう考えると、寺や神社での踊りは、我らこうして今年一年元気に過ごすことができましたという神様仏様への報告とお礼ということになろうか。そんな晴れ舞台であるからして衣装もちゃんとしている。驚いたのは足元。浴衣でも裸足に下駄ではなく、白い足袋に赤い鼻緒の草履を履く。これが実にかっちょいい。いかにも正装。神仏に見ていただくという美しい緊張感。

 ということで、喜び勇んで人生初の白足袋を履こうとして驚いた。き、きつい! しかも布の伸縮性ゼロ。足がちいとも入らない。「サイズ小さいんじゃ?」と恐る恐る大先輩方に尋ねると「足袋は小さめを履くのが粋なの」と一蹴され、ほぼ転げまわる勢いでなんとか足を押し込むが、今度はかかとのホックが入らない。再び転げ回ってなんとか履き切る。あら確かにシワひとつ寄ってない! なるほどこれはこうしたものなのだ。

 もう一つ驚いたのが洗濯。真白な足袋は一瞬にして汚れる。その日のうちに石鹸をすりつけ、歯ブラシでこするが縫い目の汚れが難物。干す時も慎重に形を整え精一杯シワを伸ばす。洗濯機や乾燥機にはなしえぬ技が要求されるのである。昔は年配者が若輩者に教え伝えたのだろう。

 年寄りが尊敬されて当然である。便利は年寄りから尊厳を奪う。

AERA 2019年11月11日号

稲垣えみ子

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