さらにここ5年ほどは熱帯地域に生息するネッタイトコジラミも国内で確認されている。日本国内で使える薬剤が効きにくく、さらに厄介な存在だ。

 ただ、南京虫が伝染病を媒介することは確認されていない。冨田研究官は「命にかかわらないので、報告や研究が少ないのが実情」と話す。

 米国で20年に開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)の会場を変更すると10月19日、トランプ米大統領がツイッターで明らかにした。もともと予定されていた会場は、フロリダ州マイアミにあるトランプ氏自身が所有するリゾート施設。「自らの経済的な利益のために職務権限を使っている」と批判されていた。

 実はこの施設、「南京虫だらけ」とSNSでうわさが広まっていた。AFP通信によると、8月末にあったG7で、トランプ氏が次回開催地に自身のリゾートが最適とアピールすると、ツイッターで「#Trumpbedbugs(トランプトコジラミ)」が話題となり、トレンド入りした。16年に南京虫に刺されたとして宿泊客が提訴、和解した記事が拡散されたからだ。トランプ氏は「虚偽でいやらしいうわさだ」とツイッターで反発していたが、G7の会場変更には、南京虫問題も影響したとの見方がある。

 小さな虫が、世界情勢もitchy(かゆい、落ち着かなく)にさせている。(ライター・井上有紀子)

AERA 2019年11月11日号より抜粋