矢萩:すでに大学は就活の予備校と化しています。そして、高校は大学の予備校化。中学校は高校の予備校化。そして、小学校は中学校の予備校化……。予備校化が、豊かな人生を疎外していると感じますね。そんな「逆算時代」は終わりにしたほうがいいと思うのです。

安浪:同感ですね。例えば、大学入試の英語が4技能になるからと一生懸命勉強して大学は合格しました。でも自分でそれを使いたいと思わない限り、社会に出ても使わないままでしょう。親の言う通りに一生懸命勉強して、いい大学に入った。そこで一生懸命就活していい会社に入った。収入的にも安定しました。でも、それで幸せを感じていない人がいることは確かです。

矢萩:これから、社会はより不確実性が高まっていくと見られています。そんな時代を生きるのは、誰にとっても大変です。今を犠牲にしても、誰も将来を保障してはくれません。

安浪:本当にそうです。

矢萩:ポイントは、「今を犠牲にしない」という感覚を持つことが大事です。中学受験に関しても同様です。中学受験を選ぶのはいいんです。ただし、「将来のために今を犠牲にして頑張る」と思ってしまうと、親も子もしんどくなってしまう。そうではなく、「今やっていることはきっと将来のためになる」と視点を変えてほしいと思います。それがハードなスケジュールを乗り切るための原動力になります。

安浪:その通りですね。勉強って何のためにするかといったら、幸せで豊かな人生を送るためにやるんですもんね。大学入試に備えて勉強するのではない。

矢萩:そのためにはやはり、受験や合格を目的としすぎず、リアルな子どもの姿をよく見ることが大切です。実は私自身も中学受験をして進学校に行ったのですが、そこで不登校になりまして。家族との関係も良くなかった。そしてこの仕事をするようになってからも、中学受験で不幸になる人をたくさん見てきました。塾の言うとおりに勉強していても塾が将来を保障してくれるわけではない。

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