間に合うか、間に合わないかというときは心臓の鼓動が速くなって血圧が上がり、集中力が高まる。

「血圧の上昇はよくないことのように言われますが、短時間である程度の範囲ならば血流が多くなって脳がスッキリし、判断力や記憶力が高まります」(枝川教授)

 たしかに夜に予定が入っているときのほうが、段取りよく仕事ができることはよくある。

 出版社勤務の女性(42)は3年前に第1子を出産し、1年弱の育児休暇を経て職場復帰した。もともと時間をかけてじっくり取り組むのが好きなタイプで、深夜残業や持ち帰り仕事は当たり前。そのやり方が自分に合っていると思っていた。出産後は仕事と育児の両立ができるか不安で、退職してフリー編集者になろうかとも考えた。だが、今は以前とほぼ同じ量の業務をしながら、週3日の保育園のお迎えをこなしている。

「今思うと、以前は仕事のエンジンがかかるまでにずいぶん時間がかかっていました。今は毎日必死な分、『仕事がはかどらない』という時間がなくなり、結果的に短時間で仕事が終わるようになりました」

 頭をフル回転させることは脳の活性化や若返りにつながるという。(編集部・川口穣、ライター・谷わこ)

AERA 2019年11月11日号

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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