撮影/今村拓馬
撮影/今村拓馬

 仕事を効率的にこなすには、脳の特性に合わせた仕事内容が重要になってくる。起床後10~16時間となる夕方は疲れが蓄積しているが、意外にもアイデア出しに最適だという。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。

【図】脳科学で組み立てる最強の24時間

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 いったん覚醒度が下がった脳の働きは、体内時計の働きにより17時ごろから再び高まる。一方、意思決定をする前頭前野はだんだんと疲れが出てくるころだ。この時間帯は、アイデア出しに向いている。

「実は、人間の脳には毎日何百ものアイデアが浮かんでいます。しかし、前頭前野が勝手に価値判断をして、気づかないうちに次々にボツにしているのです。なかには素晴らしいアイデアがあったかもしれません」(脳神経科学者、枝川義邦・早稲田大学教授)

 この時間にアイデア出しに取り組めば、一見突拍子もないようなアイデアも浮かびやすい。同じ意味で、適度なアルコールも効果があるという。居酒屋会議もおすすめだ。

 もちろん、そのアイデアが本当に使えるかを論理的に判断するのは起床後3~4時間が向いている。夕方以降に思いついたアイデアはひとまず書き出して、翌朝改めて精査するのがいいだろう。

 もっとも運動に適しているのがこの時間帯だ。起床直後は覚醒度が低いためにケガをしやすく、就寝直前は覚醒度を上げてしまい、寝つきを悪くする。20分程度の軽い運動は脳の血流をよくし、処理能力や記憶力を改善したという報告があり、筋トレによって筋肉が傷つくことで放出される「イリシン」という物質は、脳のニューロンを増やす作用があるといわれている。帰宅時に1~2駅手前で降りて歩いたり、帰宅後に軽い筋トレやストレッチをするとよいだろう。

 また、この時間のカフェインは睡眠に影響する。個人差はあるが、おおむね寝る前6時間以降のカフェインは避けたい。

 仕事においては、「つじつま合わせ」も重要なキーワードだ。退社時間を決めないままダラダラと仕事をするより、思い切って予定などを入れてしまったほうがいい。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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