「日本と中国の文化が混ざり合い、沖縄固有の文化が生まれた、首里城はその象徴と位置付けられます。これは、沖縄だけでなく、人類にとって大事な遺産です」

 復元に向けては、木材調達の困難さを指摘する。

 戦災で沖縄には巨木がほとんど残っていなかったため、前回の復元時は主に台湾産のヒノキを取り寄せた。ほかに、沖縄の特色を少しでも出したいとの思いから、沖縄で「チャーギ」と呼ばれるイヌマキ科の伝統木材を一部で使用したという。ただ、これも沖縄では調達できなかったため、鹿児島県と宮崎県で探し、沖縄へ運んだ。しかし今では、九州南部でも確保は困難だという。

■地元の職人に技術を継承

 一方で前回より有利な点もある。復元のための図面などの資料がそろっていることに加え、建築や彩色を担う職人が沖縄の地元で育っていることだ。復元事業の当初は、宮大工や漆職人を本土から招いていたが、長期にわたる事業の間に地元の職人に技術が継承されているという。

「これは首里城の復元に長い時間をかけてきたおかげかもしれません(笑)。だから今度は、技術的なことは地元の人たちで十分対応できるはず。そこは安心材料です」(鈴木さん)

 10月31日朝に首里城焼失のニュース映像をみたとき、鈴木さんは「俺は30年間、何をやってきたんだろう」と落胆したという。だが、未来に宝を残す、タスキをつないだ一人であることは間違いない。(編集部・渡辺豪)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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