いわゆる「追い出し部屋」と同じ手法だと感じた男性は、社内の労働組合に相談。組合から人事部にも交渉してもらったが、状況は改善されなかった。

「私への嫌がらせを実行したのは直属の部長です。その部長は、当時私が勤めていた九州の支社に20年近く在籍していて、支社内の人事を完全に掌握していました。トップの支社長ですら強く注意できず、結局は全員が部長の横暴を黙認していました」

 このままでは潰されると思った男性は、異動願を提出。ところが「引き取り手がない」という一方的な理由で部長に拒否された。その後も男性は問題解決の手を尽くしたが、6年たっても状況は変わらず、昨年、転職の道を選んだ。

「今でも部長のことは憎いですよ。でも、部長の横暴を止められる人間や管理体制が社内になかったことも問題だと思う。こうなると訴訟を起こすか、辞職するかという選択肢しかなくなってしまいます」

 職場だけではなく、「ママ友」の間でもいじめはある。都内メーカーに勤務する50代女性は、長子が小学校に入学した際、同じ学年の母親から無視されるなどの嫌がらせを受けた。

「集団登校の集合場所に子どもを送り届けた際に、『おはようございます』と挨拶しても完全無視。『私たちに話しかけるな』という圧を感じました」

 子どもに登校班の班長など、負担の大きい役割を勝手に押し付けられたり、登下校時の保護者の「旗持ち当番」をすっぽかされたり、嫌がらせは続いた。その理由は、子どもが「保育園出身」だったから。

「嫌がらせは『幼稚園出身組』のママたちで結託して行われました。理由はよくわかりませんが、子どもを保育園に預けてまで働くことが気に食わなかったのかもしれません。馬鹿馬鹿しくて、放っておきましたが……」

 取材ではほかにも、「学歴や出身地を理由に差別された」「新人で仕事ができず仲間外れにされた」「家族の病気介護で休みがちなことについて陰口を言われた」といった声があった。(ライター・澤田憲)

AERA 2019年11月4日号より抜粋