「ローストビーフとマッシュポテトにサラダとか。全然自分の知らない世界で、いろんな人と話して楽しくて。ありがとうと言われるのも嬉しかった」

 95年に日本のマッキンゼーに就職して帰国する。ボランティアをしてみようかと、電話帳を繰ってある団体をたずねてみた。NPOという言葉もない頃だ。「どのくらい来られるかと聞かれて、1カ月か2カ月に1度、と答えたら週に3日くらいでないと、毎回教えないといけないから、と言われて」

 米国ではスタッフがボランティアにいろいろと指示してくれた。日本はスタッフが足りないからそれができない。

「普通の社会人がボランティアを時々できるようになるといいなと。50歳になればそれができると思ったんです。結婚子育ても一段落し、社会のこともある程度わかっているだろうから」

 外資系のコンサルや投資会社で、事業の成長支援を中心にキャリアを積み重ね、50歳になった。調べると日本のNPOを取り巻く状況も変わり、ビジネス界の人々がNPOを支援する団体も増えていた。そういった団体の一つソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)に関わり始めた。

 だが、企業を支援する仕事も続けたかった。

「人が足りないというので、『引退した人たちを雇ったら?』と言ったら、『世代ギャップがあるし、手を動かせない』と言われて。もし引退まで待って、『必要ない』と言われたら、人生最大の後悔」

 やるなら50代の今しかない。そこで半々でやってみようと18年末で会社をやめ、フリーのコンサルをしながらSIPの仕事を始めた。

 SIPも業務拡大期にあたり、結局7月に代表理事兼CEOに就任、全力を注ぐことになった。チャンス・フォー・チルドレンという、子どもたちの学習援助を行う団体の経営支援を始めたところだ。

 共通するのは「米国」だ。社会貢献先進国である米国で教育を受け、NPOを体験して、その後の人生に生かしている。そして、人生後半をどう満たし、体力も知力も充実した50代を何に捧げるかについて向き合った結果、社会貢献を選んでいる。

次のページ