※写真はイメージ(撮影/写真部・松永卓也)
※写真はイメージ(撮影/写真部・松永卓也)
厚労省の再編リストに挙がった国立病院(AERA 2019年11月4日号より)
厚労省の再編リストに挙がった国立病院(AERA 2019年11月4日号より)

 厚生労働省は診療実績が乏しいなどとして、統廃合の検討を求める424病院を実名公表した。そのリストには、地方医療の要ともいえる国立病院機構が含まれていた。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

【厚労省の再編リストに挙がった国立病院はこちら】

*  *  *

 大きな問題もある。424病院に国立病院機構の30病院が含まれていたのだ。

 国立病院機構とは、旧国立病院を運営する独立行政法人のこと。旧国立病院は、へき地で病院を開いたり、採算を取りにくく民間では難しい救急や小児医療、先進医療をしたりするのがミッションだった。

 国立病院機構は04年に国の特別会計から離れ、基本的に独立採算制に移行した。国が運営する時代は、最終的に7千億円超の負債を抱えていたが、経営改革により現在は4千億円台に縮小。診療実績に応じ国立病院同士の統合を進め、独法化時点で154あった病院は現在141になり、初年度から経常収支の黒字化を達成している。16、17年度の赤字は、在院日数の短縮により収益が伸び悩んだこと、薬剤購入費や人件費が影響したとされる。

 会計検査院によると、17年度に診療事業の収支が黒字だったのは、機構の約38%に当たる55病院。人口が多い都市にあり、病床が多い大規模病院は毎年度、診療事業の収支が黒字の傾向があるが、小規模病院は赤字だ。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師(51)はこう語る。

「国立病院機構は独法化した際、国から1兆1506億円分の病院施設などの現物出資を受けていて、法人税も非課税。都市部で利益をあげる病院と地方で赤字になる病院のどちらもあって当然で、機構全体で黒字なら問題ないはず。なのに、リストに入れた。今後、国立病院機構が赤字病院を統廃合していく可能性が十分あります」

 869の公立病院の院長が加盟する全国自治体病院協議会の小豊会長(69)は本誌取材に次のように語る。

「不採算という理由では自治体が経営する公立病院は手を引けない。事情に合わせて、地域と病院で話し合うべき」

次のページ