松尾スズキ(まつお・すずき、右):1962年、福岡県出身。作家、演出家、俳優。長編映画4本目の本作で初めて脚本・監督・主演すべてを務めた。12月から「キレイ-神様と待ち合わせした女-」が上演/中山美穂(なかやま・みほ):1970年、東京都出身。85年、ドラマ・CDデビュー。映画「Love Letter」(95年)、「東京日和」(97年)、ドラマ「コンフィデンスマンJP 運勢編」(2019年)などに出演(撮影/篠塚ようこ)
松尾スズキ(まつお・すずき、右):1962年、福岡県出身。作家、演出家、俳優。長編映画4本目の本作で初めて脚本・監督・主演すべてを務めた。12月から「キレイ-神様と待ち合わせした女-」が上演/中山美穂(なかやま・みほ):1970年、東京都出身。85年、ドラマ・CDデビュー。映画「Love Letter」(95年)、「東京日和」(97年)、ドラマ「コンフィデンスマンJP 運勢編」(2019年)などに出演(撮影/篠塚ようこ)
「108~海馬五郎の復讐と冒険~」は10月25日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。配給:ファントム・フィルム(c)2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会
「108~海馬五郎の復讐と冒険~」は10月25日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。配給:ファントム・フィルム(c)2019「108~海馬五郎の復讐と冒険~」製作委員会

 松尾スズキのR18コメディー「108(イチマルハチ)~海馬五郎の復讐と冒険~」。主人公の海馬を演じた松尾さんと妻・綾子役の中山美穂さんが、「夫婦」や「笑い」について語った。AERA 2019年10月28日号に掲載された記事を紹介する。

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──SNSで妻の浮気を知り、投稿についた「いいね!」の数だけ女を抱いて復讐するという異色作。どういったことから着想を得られましたか?

松尾スズキ(以下、松尾):50歳になった頃、人生の節目に自分の限界に挑戦してみようと思ったんです。脚本・監督・主演をすべて自分でやって、ありとあらゆることから逃げない。そう思った時に一番自分が見せたくないのは自分の濡れ場だなと。これを何とか気持ち悪くないように見せて、笑いに転化できるような話というところから考え始めました。

──中山さんは、松尾組初参加です。

松尾:中山さんとはドラマで一緒になって京都で撮影していたんです。監督が食事の機会をつくってくれて、その時に中山さんにこの映画の話をしました。

中山美穂(以下、中山):構想をお聞きしておもしろそうだなと思って。ぜひやりたいですってお願いしたんです。

松尾:あの京都の一夜は貴重でした。しばらくして共通の友達から、中山さんが僕の映画をおもしろがってくれているというメールが来たんです。そんなに詳しく話してないし、「セックス中に膣痙攣になって二人羽織で親父の死に際に立ち会う」ということを主に話したのに。「え?」と思って、とりあえずシナリオを送りつけたんです。

中山:シナリオを読んで、さすがに悩みましたよ(笑)。悩んで悩んで、松尾さんを呼び出してお話をうかがって。それでよしやろうって決めたんです。

松尾:この映画について考えだしたのはちょうど2回目の結婚をする時期で、夫婦というものについてすごく考えていました。1回結婚に失敗しているし、2回目の結婚ということでもっと重く考えるところもあった。その頃は「波の漂うボートの中の二人のようだな」という気分だったんです。

──星野源さんが歌う主題歌「夜のボート」の歌詞そのままですね。

松尾:そうそう。結論が出ないということがこの映画の本質だと思う。夫婦というのはなんだろうと2回目も考えたけど、やっぱりわからない。だけど、契ってみたいという気持ちには嘘をつけない。

中山:最後までわからないかもしれないですよね。

松尾:前の結婚だって別れる1年前までは仲良かったし、なんで別れが訪れるのかは謎なんだよね。明確な理由もない中そうなってしまうという、不条理や間の悪さがつきまとう。何もなくうまくいっている人のほうが少ないと思うし、ただ続けていることに意味があるのかとも考えるしね。映画を見て、そういうことを笑いながら考えてもらえたらいいなと思います。寿命も延びていくから、結婚2回目、3回目という人もどんどん増えている。2回目ありますか?

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