イラスト:花モト・トモコ
イラスト:花モト・トモコ

 毎晩の肉食志向に自己流の糖質制限ダイエット──。現代人が好みがちな食習慣が腸内環境に打撃を与えているという。余分な脂肪を脱ぎ捨て、腸内環境をきちんと上げるにはどうすれば? AERA 2019年10月28日号から。

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「腸がこんなにも大切だったんですね……」

 会社経営者の男性(53)は、医師にしみじみとつぶやいた。ずっと苦しんできた不調の「原因」が、あまりに意外なものだったからだ。

 男性は単身者で、仕事が生活のすべて。朝から深夜まで、休日も休みなく働いていた。食事は3食コンビニで済ませ、暴飲暴食もしがちだった。気づけば身長167センチで体重75キロという典型的なメタボ体形。喫煙習慣があり、極度の運動不足で、血圧は160台、悪玉コレステロール(LDL)値も220mg/dlと高かった。

 最初にかかった医師からは、運動と食事療法を指導された。だが、多忙のため実行できず、指導とはほぼ真逆の生活を送るばかり。やがて、深刻な不調が表れた。

 いつも体がだるくて疲れやすい。頭はぼうっとしがちで、慢性的な便秘もあった。男性は江田クリニック院長・日本消化器病学会専門医の江田証医師のもとに駆け込んだ。

「いわゆる慢性疲労症候群で、ブレイン・フォグもあるようでした」

 診察した江田医師はそう振り返る。ブレイン・フォグとは、脳に霧がかかったようにぼんやりした状態が続くことを言う。

 江田医師は、「ある狙い」で食事指導を始めた。食物繊維が豊富な玄米、キャベツやブロッコリースプラウトなどの野菜を食べること。スクワットなどの筋トレも取り入れた。

 結果、男性は2カ月ほどで症状が劇的に改善。体重も10キロほど落ち、メタボ体形から抜けだした。人生は一変した。

 男性を激変させた江田医師のある狙いとは、「腸内環境の改善」だった。江田医師は腸内環境の重要性をこう指摘する。

「腸内環境を整えることが、ダイエットはもちろん、慢性疲労症候群などあらゆる心身の不調を改善するカギになります」

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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