徳田教授の研究室では、こうした玩具を使った子どもの遊びの研究をしてきた。5人の子どもにバービー4体と車いすに乗ったベッキー1体を渡したところ、誰もベッキーで遊ばず、「ベッキーちゃんは舞踏会には行けないよ」などと仲間はずれにしてしまったという。だが、大人が車いすの操作方法などを紹介するとベッキーも仲間に入れ、最後はベッキーの取り合いになるほどになった。論文をまとめた水野智美准教授はこう話す。

「最初は車いすに違和感を抱いていた子どもたちも、車いすでできることがたくさんあるとわかると一緒に遊び始めたのです」

 こうしたおもちゃを通じて、障害を持つ子どもは自分を肯定的に受け入れ、障害のない子どもは多様性を学ぶことができる。玩具文化に詳しい白百合女子大学の森下みさ子教授は言う。

「大人から子どもに押し付けるのではなく、子ども自身が面白がって遊ぶことが大切です。子どもはもともと多様なものとかかわる素質を持っていますから、夢中になって遊ぶ体験を通じ関係の障害を乗り越えていきます」

 特別な日でもないのにおもちゃを買うなんて、という家庭もあるだろう。そうした場合は、共生社会をテーマにした絵本もまた、障害への理解を深める助けになる。遊びの世界で多様性を知ることは、現実社会における心のバリアフリーを作ってくれるはずだ。(編集部・深澤友紀)

AERA 2019年10月21日号