高須光聖(たかす・みつよし)/1963年、兵庫県尼崎市生まれ。放送作家。ダウンタウンのほぼすべてのレギュラー番組を手がける。映画・ドラマの脚本、作詞、ラジオパーソナリティーとしても活躍中(撮影/篠塚ようこ)
高須光聖(たかす・みつよし)/1963年、兵庫県尼崎市生まれ。放送作家。ダウンタウンのほぼすべてのレギュラー番組を手がける。映画・ドラマの脚本、作詞、ラジオパーソナリティーとしても活躍中(撮影/篠塚ようこ)

 放送作家の高須光聖さんによる『おわりもん』は、混迷の戦国時代、親も仕事も何もない「おわりもん」と揶揄されながら自由気ままに生きる五郎左衛門と又兵衛が、様々な人と出会い、事件に巻き込まれながら人生の大転換を生きていく様子を描いた時代小説だ。著者の高須さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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 ダウンタウンの番組などで知られる放送作家の高須光聖さん(55)の書き下ろし時代小説、というと「あの高須さんが?」とちょっと意外だ。

「戦国時代の日本のちょんまげや切腹、鎧といったトリッキーでグロテスクな文化は、外国人から見たらSFファンタジーみたいに見えるんじゃないか。書き残されていない歴史の事実もたくさんあるので、こんなこともあったかもと、時代小説なら想像を膨らませやすい。ファンタジー性を残しながらパラレルワールド的に書けたら面白くなると思いました」

 執筆のきっかけは自身が脚本を書き、監督した短編映画「賽(さい)ノ目坂」だ。首から下を地中に埋められた罪人の五郎左衛門と又兵衛。それぞれ番号が振られ、通りがかりの者が賽を振り、出た目のほうの首に鋸を引く罰を与えられているというワンシチュエーションものだ。編集者に「この後どうなるんですか?」と尋ねられ書いてみると、どんどんストーリーが展開していった。血なまぐさい時代に2人が飄々と生きていく様を、現代的でポップな大阪弁の会話で見せている。

「この時代の人びとは戦や飢饉などに否応なく巻き込まれていて、一日が無事に終われば、明日のことは明日というくらいに吹っ切れた人たちだったんじゃないか。死ぬ前だって意外とお祭り気分みたいなところがあったんじゃないかと思いました」

 老後資金に2千万円必要などと言われ、生きていくことにプレッシャーを抱えている現代人にとっては、この命が軽かった時代の人たちの死生観が逆にリアルな魅力をもって響いてくる。

「不謹慎に見えますが、死が身近だからこそ軽口でも言わないと不安でしょうがない。人生ってこんなやばくても、こんなに軽やかに生きている。それを粋に感じました」

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