一方で、「財務的、経営的に厳しくなるとかなりセンシティブに見なければならないが、現状ではむしろ毎年の借入金返済額を重視している」(上智)、「健全性が高いから借り入れ余力があると読んでいただくのは構わないが、そこはあまり考えていない」(早稲田)など、さほど重視していない大学も多いようだ。

 ここまでの指標で上位に入った各大学を中心に経営力とその背景を探ってきたが、これらの指標は18年度の経営状態を切り取ったものであり、指標が低くても教育や研究の環境が充実している大学があることは言うまでもない。青山学院の桑原一利常務理事(69)はこう話す。

「教育は一種の『アベコベ産業』です。良い教育をすればするほどお金がかかるので、財務指標が良いだけでは良い教育をしている証しにはなりません」

 また、これらの指標以外にも、大学の経営状態を知るために重要なデータはある。大学の教育状況などをチェックする認証評価機関、大学基準協会の工藤潤事務局長(59)は言う。

「中長期の財政計画とともに総合的にさまざまな指標を判断したうえで評価することが大切だ。似たような収益構造を持つ大学群同士で比較することも重要。大学が公表している年度ごとの事業報告書も参考になるケースがあるので、目を通してみるのも理解の手助けになるかもしれません」

(編集部・小田健司、小柳暁子)

AERA 2019年10月21日号より抜粋