小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が発売中
浜松市は外国籍の子どもを支援。不就学、不登校の外国籍の子どもが通うNPO運営の教室も (c)朝日新聞社
浜松市は外国籍の子どもを支援。不就学、不登校の外国籍の子どもが通うNPO運営の教室も (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 文部科学省が今年初めて行った全国調査で、日本に住む外国籍の子どものうち、2割弱に当たる2万人近くが「不就学」の可能性があることがわかりました。別の調査では、日本語教育が必要なのに学校で何の支援も受けられていない子どもが1万人以上いることが判明しています。どれほど心細いでしょう。とても人ごととは思えません。なぜなら私たち一家はまさにオーストラリアで、言葉の不自由な外国人として生活をスタートしたからです。

 息子たちが最初に通ったのは西オーストラリア州の公立小学校のIEC(インテンシヴ・イングリッシュ・センター)というコース。児童は全員、英語が母語ではない子どもたちです。出身は世界35カ国に及び、移民や難民や国際結婚家庭や長期留学など、来豪理由もさまざま。全員で「英語で学ぶ」ための勉強をします。ただ日常会話を覚えるのと、専門的な語学支援を受けるのとでは全く違います。おかげで息子たちは近所の公立校に転入してからも順調に学ぶことができました。日本にも同様の仕組みを急いで整える必要があります。

 親の日本語支援も重要です。持ち物や行事の案内など、学校からの連絡は膨大。親が学校とコミュニケーションを取れなければ、子どもの生活が成り立ちません。不就学問題は、親への支援なしでは解決しないのです。日本語が不自由な人に自己責任を求めるのは酷です。公的な言語学習支援や、音声翻訳機能を使った学校連絡アプリの開発・普及など、国を挙げての環境整備が不可欠です。

 外国籍の人が日本に親しみを持って安心して暮らせるようにすることは、社会の安定につながります。中でも子どもの教育環境の整備は人道上の急務です。増え続ける外国人の生活の質を向上させる政策は、日本社会の中長期的な平和と安全の要なのです。

AERA 2019年10月14日号

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小島慶子

小島慶子

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。共著『足をどかしてくれませんか。』が発売中

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