広島県の新しい高校入試制度(素案)のポイント(AERA 2019年10月14日号より)
広島県の新しい高校入試制度(素案)のポイント(AERA 2019年10月14日号より)
アンケートでわかった「内申書」についての声。AERA 2019年10月14日号より(撮影/写真部・東川哲也)
アンケートでわかった「内申書」についての声。AERA 2019年10月14日号より(撮影/写真部・東川哲也)

 学習の記録や部活動、出欠日数などが記載された「内申書」(正式には「調査書」)。高校入試に影響するため、中学生親子にとっては気がかりな存在だ。AERA 2019年10月14日号では「内申書」についてアンケートを実施。「生徒を萎縮させる」など弊害も指摘される中、活用法を見直す動きが出てきた。

【実力で評価されていない…内申書について親や教師からの「声」はこちら】

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 一発勝負の学力テストだけで合否を決める弊害をなくす。それが内申書制度導入の目的だったはずだが、アンケートからは行き過ぎた内申支配の実態が浮かび上がる。

「部活をやってないと不利になるという噂のために、楽勝と言われる部活に生徒が殺到」(福岡県、中学教員)、「興味の持てない授業でも必死に手を挙げ、やる気もないのに委員会や生徒会に立候補することが横行している」(東京都、51歳、保護者)──。前出の中学教員は「ここはテストに出ますか」「◯◯は内申の評価に響きますか」と生徒に聞かれるたびに、「従順さを身につけさせているだけではないのか」と複雑な思いに駆られる。

 内申に縛られているのは親も同じだ。群馬県の女性(45)は「夏の体育の合間でも水筒の水を飲めないのはなぜ?とか先生に聞きたいことは山ほどありますが、先生の機嫌を損ねると内申に響くという恐怖で保護者の誰も聞けない」と話す。

 こうした実情は文部科学省も問題視し、今年3月には、「主体的・対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領の趣旨も踏まえて、高校入試のあり方や調査書の活用法を見直すよう通知を出した。これにいち早く反応し、9月半ばには改革の素案を出したのが広島県だ。

 主導したのは、リクルート出身で神奈川県の公立中学の民間人校長から18年、広島県教育委員会教育長に転じた平川理恵氏。改革の素案で特に注目されるのは、調査書(内申書)の簡素化と自己PR書の導入。そして、学力テストと調査書の比重や、内申点の傾斜配分などを各高校が「スクールポリシー」や「育てたい生徒像」に基づいて自由に決められる点だ。約30年、学力テストと調査書の比重は125:130と内申重視型だった同県にとっては大転換。

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