【ウェブディレクター 野村和司さん(42)】Wisotope/WIWA代表。東京生まれ、札幌在住。F1観戦が好きで、この9月にはAERA dot.でF1関連のウェブ記事を執筆し、ライターとしてデビューした(撮影/今村拓馬)
【ウェブディレクター 野村和司さん(42)】Wisotope/WIWA代表。東京生まれ、札幌在住。F1観戦が好きで、この9月にはAERA dot.でF1関連のウェブ記事を執筆し、ライターとしてデビューした(撮影/今村拓馬)
うつ病の診断基準(AERA 2019年10月14日号より)
うつ病の診断基準(AERA 2019年10月14日号より)

 回復期にある人にとって、復帰を阻むのは、社会の側のうつ病の理解の乏しさだ。ネガティブな情報が氾濫しているからだ。うつ病になったらその人は「四六時中、状態が落ちている」といった誤解もある。AERA 2019年10月14日号に掲載された記事を紹介する。

【うつ病の診断基準とは?】

*  *  *

 うつ病の回復期にある札幌市の野村和司さん(42)は言う。

「正直、うつのレッテル貼りはやめてほしいですね。思い切り笑うこともある。相変わらず、僕はおしゃべり。姪に会う度、『なんて愛おしいんだ!』と感じる。普通に人間なんですよ(笑)」

 発病は、35歳。仕事上のトラブルや、付き合っていた女性との別れなどが原因だ。1年半後に回復。だが、5年前に2度目のうつが襲った。

 クラウドファンディングで資金を募り、ウェブで配信する大型のスポーツ娯楽番組の制作に携わっていた。ロケハンに出ても全然頭が働かなかった。パニック障害も併発し、以来、電車に乗れなくなった。原因は、初回のうつ病から回復した後のオーバーワークだった。「また全開で仕事が出来るぞ!」という嬉しさと、「働き盛りの十数カ月間を取り返さなくちゃ」という焦りの両方があった。

 拍車をかけたのは、大手の取引先から受けたパワハラだった。到底のめない取引条件を提示され、罵詈雑言を浴びせられた。

 さらに、野村さんは、クラウドファンディングの出資者へのリターンも公言しており、責務を果たさねばというプレッシャーがあった。症状が重い時には、食事は「3食チャーハン」。パソコンの明かりだけで暮らし、風呂にさえ入らなかった。

次のページ