特別な場合以外は人に相談せずに、自己解決に至ります。相談してどうするのかなって思っちゃうんです。しんどくなったときはゲームをしたり、ベランダから星を見たり。星を眺めていると、なんでこんなことで悩んでたんだろうって思えるので。でも、共演者の前ではふざけ倒しますし、ボケたがりです。誰も聞いてないなと思ったら、ツッコまれるまで言う。「聞こえてんねん! あえて無視してんねん」ってまーしーに言われます(笑)。別に面白くなくてもよくて、そういうノリを楽しみたいんです。

 盟友・和田雅成とは、ドラマ「REAL⇔FAKE」や「テレビ演劇 サクセス荘」でも共演。「サクセス荘」は、2.5次元の人気俳優が10人も出演し、舞台のように撮り直しなしの本番一発勝負で撮影する挑戦的な番組だ。彼は英国貴族になりたいサー役を演じている。

 セリフを間違えてもそのまま放送されちゃうし、容赦なくて怖いです。でも、その緊張感が、視聴者には面白いんでしょうね。誰かがセリフを飛ばしても、意外と見ている人には気づかれないみたいですが、第7回で僕のセリフが出てこなくて頭が真っ白になっている場面は、完全に「やべえやっちゃった」という顔をしています(笑)。そういうところも見どころですね。

 誰かがセリフを飛ばしたら皆でフォローしつつも、チャンスをうかがって仕掛け合ったりもする。若手が集まる場では、バチバチやった方が楽しい。

 リハーサルと全然違うことをする人もいます。そういう闘いですしね。それこそサーはアホなキャラなので、全然台本と関係ないことを言ったりして、果敢にぶっこんでます。でも、みんながちゃんと拾ってくれる。信頼の置ける人たちですね。

 2.5次元俳優を集めたテレビ番組や配信番組が次々と生まれているこの現状は「いろいろな道を開拓させてもらっている最中」と考えている。

 真摯に向き合って、真摯に取り組むことで、逆にどんな道でも切り拓けるかもしれない。これからも新しい景色をファンの方々と一緒に見られたらいいなと思っています。よく「休みがないから倒れないでね」と心配されるんですけど、一日一日遊んでいるような感覚なので、ストレスがないんです。ファンの人と触れ合えるイベントも大好きですし、この仕事は天職だと思っています。

 人間・荒牧慶彦としてはどんな目標を持っているのだろう。

 う~ん……。今と変わらず年を重ねていって、茶目っ気があるダンディーな大人になれたら。高田純次さんみたいな(笑)。

(ライター・大道絵里子)

AERA 2019年10月7日号