「去年は航平さんがいて、安心感があったけど、今年は今のところない。そこは今年の代表になった選手が補わないといけない。高校生の橋本大輝が初めて入ってきて、安心できるチームって思わせたい。この人たちだったらいけるぞって」(航)

「『航平さんがいなきゃ無理』って、言われたくない。このメンバーが代表と決まったんだから、結果を出して、航平さんがいなくても、新しい日本の体操チームと認められたいです」(翔)

 6年前、2020年の五輪開催地が東京に決まったとき、航は高校2年生、翔は中学3年生だった。家族で「航が24歳で、翔が大学4年。ちょうどいい年齢だね。2人で出られればいいね」と話したことは、2人とも覚えている。当時は現実味がなかった「遠い夢」(航)が、今は間違いなく、現実世界の「近い目標」としてある。

 互いに「頑張ってほしい」と思いつつ、「航だけには」「翔だけには」負けたくない。

 負けず嫌い2人の理想的な切磋琢磨(せっさたくま)で、東京五輪まで突っ走る。(朝日新聞記者・山口史朗)

AERA 2019年10月7日号