「この二つを守ることで、交感神経から副交感神経への転換がゆるやかになります。私はどんなに退屈な会議でも、居眠りしたことはありませんが、それは眠くならない、疲れない食事のとり方を実践しているからです」(小林医師、以下同)

 定食や丼ものならご飯は少なめにしたい。どうしてもガッツリ食べたいときは、(1)生野菜やスープ(2)たんぱく質などのおかず(3)炭水化物の順に食べることで、自律神経の「急転換」を防ぐことができる。

「満腹では絶対に高いパフォーマンスを発揮できません。私の場合、とくに仕事の効率を上げたいときの昼食は腹6分目に抑えています。定番はコンビニの納豆巻き1本とカップの豚汁。ゆっくりよく噛んで食べれば、十分満足できます」

 プレゼン直前、緊張が高まったときには、水を一口飲むだけでも緊張が和らぐという。水を飲むことで胃腸の神経が適度に刺激されて、乱れていた自律神経のバランスが整い、平常心を取り戻せるのだ。

「喉が渇いたときに限らず、ひと息つきたいときにこまめに水分補給するとよいでしょう」

 ガムやグミを噛むことも、緊張を和らげる効果があると小林医師。

「ガムを噛むだけで脳の血流はよくなり、小脳や前頭葉運動野においては、10~40%も血流が増加することが認められている上、副交感神経が活性化されます。メジャーリーグの選手がよく試合中にガムを噛んでいるのは、このためです」

 朝食や前日の夕食にも気を配る必要がある。朝食はその日の自律神経のバランスを整えるための出発点だ。小林医師によると、男性は30代、女性は40代以降から、自律神経のバランスがガクンと落ちるという。

「朝食を抜いて、昼食以降で挽回するのは、無理だと思ったほうがよいでしょう」

 また、夕食後の3時間は腸の活動が盛んになる「腸のゴールデンタイム」であり、この3時間を確保せずにすぐ寝てしまうと、睡眠の質が悪くなると指摘する。

「食事中は交感神経が優位になり、食後は副交感神経優位に変わっていく。この移行には3時間は必要なため、夜9時までには夕食を終わらせてください」

 1日3食規則正しく美味しく食事をとることで、自律神経が整い、ストレスに強くなり、腸も元気になって便通もよくなる。プレゼンや会議のある日に限らず、日常的にも実践したい。(ライター・井上有紀子、編集部・野村昌二)

AERA 2019年10月7日号より抜粋

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら