災害ごみ置き場になっている廃校には、次々とボランティアスタッフの乗った車が入ってくる。雨を吸った畳は相当重い(撮影/澤田晃宏)
災害ごみ置き場になっている廃校には、次々とボランティアスタッフの乗った車が入ってくる。雨を吸った畳は相当重い(撮影/澤田晃宏)
大きな被害のあった千葉県鋸南町。町は高齢化が進み、若者の姿が少ない。屋根にブルーシートを張る作業のボランティアへの依頼が相次いでいた(撮影/澤田晃宏)
大きな被害のあった千葉県鋸南町。町は高齢化が進み、若者の姿が少ない。屋根にブルーシートを張る作業のボランティアへの依頼が相次いでいた(撮影/澤田晃宏)

 9月9日に千葉県を襲った台風15号。その影響で起こった大規模停電は長期化し、台風が去った後も住民は厳しい生活を強いられることとなった。東京電力パワーグリッドの会見では、今回の停電の背景に送電施設の老朽化や設備投資額の減少などの影響があったのではと指摘する声もあがっていたが、実際のところどうなのか。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。

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 9月9日未明。千葉県鋸南町の食料品店で働く池田早苗さん(36)は、母親と2人で寝室から風呂場へ逃げた。

 台風15号が直撃していた。ゴォンゴォン。バリバリ。風と雨とで自宅がひきさかれそうな音は強まるばかりだった。2人は浴槽のなかで横になり、ティッシュを丸めて耳栓を作り、両耳につめた。

 深夜2時半ごろだろうか。風が風呂場まで入ってきた。風の向こう側を目指すと、寝室の扉の向こうで窓が割れているのがわかった。とっさに扉を押さえ、そこから約3時間、風がやむまで立ち尽くした。外に出たのは、朝の5時半だった。家の前に、700メートル先にあるコンビニの壁の一部が落ちていた。池田さんは振り返る。

「死ぬかと思いました」

 池田さんの自宅は築4年と新しいが、強風で窓枠が歪み、電動シャッターは動かなくなった。1本5万円の庭木も真っ二つに折れた。それでも、天井が抜けなかっただけ幸運だったかもしれないと感じている。

 22日、災害ごみ置き場になっている廃校を訪ねると、体育館におびただしい数の畳と布団が積み上げられていた。ボランティアスタッフが話す。

「雨に濡れた畳や布団は重く、時間が経過し、カビも生えています。鋸南町の高齢化率は45%を超えます。ボランティアスタッフが集まり、ようやく運び出しが始まった感じです」

 千葉市で観測史上初の最大瞬間風速57.5メートルを観測するなど、記録的な暴風雨となった台風15号。千葉県君津市では送電用鉄塔2基が倒壊。電柱は「1千を超える想定」(東京電力)という規模で次々に倒れた。停電は1都6県で最大約93万軒に及んだ。

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