仙台市の弁当店「ここみ亭」では店内で食べる客と持ち帰りの客で容器を分ける。消費税10%とともに始まる軽減税率の混乱を予感させる (c)朝日新聞社
仙台市の弁当店「ここみ亭」では店内で食べる客と持ち帰りの客で容器を分ける。消費税10%とともに始まる軽減税率の混乱を予感させる (c)朝日新聞社
店内と持ち帰りで代金は…?(AERA 2019年10月7日号より)
店内と持ち帰りで代金は…?(AERA 2019年10月7日号より)

 10月から消費税は10%に変更された。導入される軽減税率のこと、そもそもどうして税率が上がるのか、今さら聞けない質問にズバリお答えします。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。

【表をみる】店内と持ち帰りで代金は…?

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Q1:増税の背景は
税率が10%に上がるのはどうしてなの

 一言でいうと、日本の財政が“ヤバい”から。

 2019年度の国の一般会計で101.5兆円ある歳入のうち、税収は3分の2だ。不足分は国債の発行など借金で埋めているが、限界がある。財務省が今年4月に公表した財政関係基礎データによると、国と地方の債務は来年3月末に1122兆円へ膨らむ見通し。国内総生産(GDP)との対比では2倍と、先進国で最悪の水準にある。

 一方、高齢化で医療、福祉、介護などの社会保障費はGDPの伸びを上回るペースで増加中で、財務省試算では40年に最大190兆円に達する。借金を減らすどころか財政破綻のリスクを意識させられる。

 そこで何度も目を付けられているのが消費税なのだ。19年度予算では19.4兆円と所得税の19.9兆円にほぼ並び、法人税の12.9兆円を上回る税収の柱だ。所得税は景気動向に左右されやすく、法人税を安易に引き上げると企業の体力をそぐ。国際競争力の低下、雇用や賃金への悪影響も招きかねない。これに対し、消費税は初導入以来、前年度比で1兆円以上減少したことは一度もない。税収は年5.7兆円の増加が見込まれるが、このうち国の借金返済に回るのは2.8兆円にとどまる。財務省は税率10%を通過点と位置付けているかもしれない。

Q2:軽減税率って何だ
どんな仕組み? なぜ導入? 誰が得する?

 すべての品物を税率10%にするのではなく、食品や飲料品などの税率だけ8%に抑えるのが軽減税率。増税による家計への打撃を緩和することが目的で、財務省は「所得の低い方々への配慮」と説明している。

 消費税は年齢や所得によらず幅広い世代の国民全体で負担するという特徴がある。一見すると公平だが、使えるお金の限られる低所得層にとって、高所得層と同じ税率は重い負担になる。これを逆進性(ぎゃくしんせい)という。

 そこで、生きていくうえで必要な品物の税率を軽くして、逆進性を薄めるのが軽減税率の真の狙いだ。税率が下がる印象だが、これまで通りなだけ。減税されてはいない。(経済ジャーナリスト・大場宏明、編集部・中島晶子)

AERA 2019年10月7日号より抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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