こう高らかにツイッターで宣言したのは台湾の蔡英文総統だ。アジア初の同性婚が認められた台湾の様子を日本でも大きく報道したことは記憶に新しい。確かに台湾では愛が勝った。しかし、法律で結婚できることだけがゴールではないことを、この映画は示唆している。

「日本の皆さんからすると、同性婚が法的に認められた台湾の方が進んでいるように見えるかもしれません。しかし、実際には私たちの親や祖父母世代の人たちの多くは偏見を持っていて、非常に保守的であることは否めません。この作品に出てくる二組のカップルは、みんな家族の問題を引きずっています。これらはゲイとレズビアンだから起こりうる個人的な問題というより、彼らの背後にある社会の問題でもあるわけです。LGBTの方もそうでない方も、いろんな角度からいろんな視点で見て共感していただけると思います」

◎「バオバオ フツウの家族」
バオバオとは中国語で赤ちゃんの意味。社会との軋轢や親たちとの確執を描く。9月28日(土)から順次公開。

■もう1本おすすめDVD 「アデル、ブルーは熱い色」

「演じるにあたって一番大切にしているのは、リアルかどうか。LGBTの人が見ても、あるいはそうではない人が見ても本物だと感じてくれることが重要です。そう感じられなければ受け入れられないですから」と話すクー・ファンルーさん。そんな彼女が演技の参考にしたというのが「アデル、ブルーは熱い色」だ。

 フランスの人気マンガを「クスクス粒の秘密」のアブデラティフ・ケシシュ監督が映画化し、2013年の第66回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した。特筆すべきは、パルムドールがマンガ原作に初めて与えられただけでなく、通常は監督だけが受賞してきた同賞が主演女優の2人にも贈られたことだろう。

 青い髪の美学生エマと出会い運命的な恋に落ちた高校生のアデルの数年間を描く。リアリティーを追求するため、演技指導もなければヘアメイクもなし。ほとんどのセリフはアドリブで、初めてのキスシーンだけで1週間を要したという。

 恋愛物語という側面だけでなく、一人の女性の成長物語でもある。そんなところも「バオバオ フツウの家族」との共通点かもしれない。

◎「アデル、ブルーは熱い色」
発売元:コムストック・グループ 販売元:NBCユニバーサル
価格3800円+税/DVD発売中
(編集部・三島恵美子)

AERA 2019年9月30日号