有機野菜などのネット通販を手掛ける「オイシックス・ラ・大地」も2年半前から、採用手法の一つにウォンテッドリーを導入している。転職市場の激化にともない、転職エージェントが増加。まるで不動産物件サイトのような「データベース上の人材」にしかアプローチできないと感じ始めていた。同社HR本部の宇野貴嗣さんは言う。

「大企業ではないため、優秀な方が転職を考えたときに第一想起してもらうことがまず大切です。ウォンテッドリーでは、いいところがあれば転職してもいいと考えている人と接点を持つことができます。キャリア相談のようになるときもあり、採用効果がすぐに出るわけではありませんが、ファンづくりや波及効果は見込めると感じています」

 一方、スポーツ選手のように、特定の人材を指名するのが「スカウト型」だ。転職サイト「ビズリーチ」では、職務経歴書を見た企業やヘッドハンターから直々に「スカウトメール」が届く仕組みになっている。同社事業部の伊藤綾部長は、スカウト型がもたらす可能性をこう話す。

「企業側に公開されるレジュメ(職務経歴書)で、一律に職種にしぼった検索ではなく、スキルごとの能力を見ることができます。これにより、応募者が思ってもみなかった良さを、企業が見つけることもあるのです」

 自身の売りは、企業によって気付かされる──。結果、異業種からも声をかけられるようになったのが、ネット時代のスカウト型だ。

 転職者が以前の職場の上司や同僚を水面下でスカウトし続けた結果、チームごとごっそり移籍する「スクラム採用」なるものも存在する。よくあるのは、最初に転職した人物が、人事でもないのに、一人、また一人と前職の仲間を招き入れるケースだ。転職サービス「doda(デューダ)」の大浦征也編集長は、こう指摘する。

「同じ会社にいた人を採用するほうが効率もよく、定着度も高い。採用側が集団移籍を促すのではなく、いい同僚がいれば、と声をかけている印象です。昔は転職といえば隠すものでしたが、今はSNSなどで軽やかに発信するようになった。身近な人の転職は自分事化しやすい。結果、芋づるのようになったのだと思います」

 だが、前出の松本さんは安易なスクラム採用に警鐘を鳴らす。

「スキルや人物を評価しているわけではなく、転職の際に何人連れて行くというのが条件だったりするケースもある。声をかけてきた先輩が本当に活躍しているのか、見極めてからでないと危険です」

次のページ