ジャーナリストの中野円佳さんによる著作『なぜ共働きも専業もしんどいのか』によると、日本のサラリーマンは長時間労働・転勤・労働時間外の接待などが当たり前で、それは専業主婦(主夫でもいいんですが、圧倒的多数なのは主婦)の支えがないと成り立たない働き方だといいます。そして、そのサラリーマン的働き方は1950年代半ばからの高度経済成長期に激増したそうです。それまでの日本人は農業・自営業など家族ぐるみで働き、女性の労働力率も高かったのに。

 戦後、日本中が経済復興にまい進する中で、「男は外で働き、女は家で子育て」という役割分担が押し付けられた──。母子手帳の誕生もその一端だったのではないかというのは、考えすぎでしょうか。

 母子手帳の名称や内容については2011年に検討会が開かれていますが、「妊産婦及び乳幼児の健康の保持及び増進の重要性に鑑み、母子健康手帳の名称は変更しない」という結論が出ています(※注3)。ということは、現状はわたしたちが「子どもの健康管理は父親と母親で一緒にするもの」と意識を変えていくしかありません。

【注釈】
※1 正式名称は「母子健康手帳」だそうですが、ここではより一般的な「母子手帳」の名称を使うことにします
※2 「母子健康手帳の交付・活用の手引き」より
※3 「母子健康手帳に関する検討会報告書」より

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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