孫:記憶を呼び覚ます思い出の品とか写真ってすごく大事。訪問診療も、それがいいんです。家に行くと、お孫さんとの写真とか、若い頃に消防団で表彰された賞状なんかが貼ってあって。今は寝たきりのおじいちゃんだけど、若い頃はこうやって活動してたんだなってわかる。

小島:部屋から、どんな人か想像できるんですよね。メモが一つひとつについていれば、几帳面な人なんだなとわかります。

孫:相手にどういう背景があって、どういう思いで語っているのか、想像力を使って聞き、想像力を持って話す。遺品や部屋の様子から相手のことを想像している小島さんは、まさに部屋と対話しているんだと思います。

小島:自分らしくいられる場所だからこそ、自宅で最期を迎えたい人は多いですよね。在宅医療という選択肢が広まって、自宅で死ぬことが一般的になれば、孤独死という概念もなくなっていくのかなと思うんです。孤独死ではなく、自宅死ですよね。亡くなってから発見されるまでの時間の問題はありますが。

孫:2000年に介護保険が導入されて、在宅医療が受けやすくなりましたが、まだ在宅医不足などの問題がある。でも私は家に行って診るのがすごく好きです。病院だとその人が家から切り離されちゃって、味気ない。

小島:部屋というのはその人の人生が詰まっている箱なんだなと思います。

(編集部・高橋有紀)

AERA 2019年9月23日号より抜粋