【早】綿矢りささん (35) 作家/06年卒、教育。04年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞(撮影/イマキイレカオリ)
【早】綿矢りささん (35) 作家/06年卒、教育。04年『蹴りたい背中』で芥川賞受賞(撮影/イマキイレカオリ)
【慶】手嶋龍一さん(70)  外交ジャーナリスト/74年卒、経。元NHK記者。早慶で教壇に立った(写真:本人提供)
【慶】手嶋龍一さん(70)  外交ジャーナリスト/74年卒、経。元NHK記者。早慶で教壇に立った(写真:本人提供)

 あらゆる分野で優秀な人材を輩出してきた早稲田大学と慶應義塾大学。第一線で活躍する卒業生がその魅力を語る。早稲田は作家・綿矢りささん、慶應は外交ジャーナリスト・手嶋龍一さん。AERA 2019年9月16日号に掲載された記事を紹介する。

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■慶應 手嶋龍一さん(70)外交ジャーナリスト

北海道の炭鉱主の家に育ち慶應に進んだのですが、キャンパスの記憶は断片すらありません。在学中は文革期の中国やアルジェリアなどに出かけていました。ただ、時を経て「慶應に学んで良かったなあ」と思っています。野にあって官に頼らず、独立自尊を体現した人々と深い縁を結べたからです。世紀の名馬、ディープインパクトを世に送った吉田勝已さんは、福沢門下で「開墾のはじめは豚と一つ鍋」で知られる十勝の依田勉三をほうふつさせる北のパイオニア。京都・北村美術館を主宰する木下收さんは、福沢がつくった時事新報で論陣を張った高橋箒庵の系譜を継ぐ茶の湯の数寄者。近代日本の礎を築いた福沢の精神をいまに伝える人々と知り合えたことは貴重でした。私自身は慶應から受けた学恩にいまだ報いられずにいますが、教員として慶應のゼミで預かったアジアの留学生たちがそれぞれの祖国のために献身していることを誇りにしています。

■早稲田 綿矢りささん(35)作家

 早稲田大学は小説を書いている卒業生も多く、作家さんの著者略歴欄で見て憧れていました。早稲田が出てくる村上春樹さんの『ノルウェイの森』が好きで高校生のときよく読んでいました。立て看板やビラ、個性を大切にする雰囲気などに、学生が自分達の意見をちゃんと口にする気概を感じました。そこにいるのは現代の学生なんですが、早稲田に入るとバンカラ気質になるというか、歴史を感じる建物も多かったので、ちょっとタイムスリップしたような感じがありました。教育学部国語国文学科でしたが、文学史や文法、くずし字などを歴史に沿って丁寧に教えてくれて、とても勉強になりました。当時学んだことはいまでも役立っています。大学生を書くときは、大学名を出さなくても早稲田の雰囲気を思い出して書くことがあります。「ワセジョ」の定義は人によってばらばらですが、私の周りでは内向的で思慮深い人が多かったです。

(編集部・小田健司=慶應、小柳暁子=早稲田)

AERA 2019年9月16日号