「単科医科大学と対等合併する戦略に絞って考えていく」

 昨年就任した田中愛治総長(67)は、総長選でそのように医学部構想を打ち出して話題になった。医学部の新設は、全国医学部長病院長会議の承認が必要なためほぼ不可能と言われているからだ。だが今、田中総長は本誌の取材にこう語る。

「病院を建てたり買収したりして医学部を作るということは考えていません」

 現代の医学教育には、医学の知識だけではなく経済学、法学、生命倫理学など幅広い知識が必要だ。特に理工学部の強い早稲田にとっては、医療用ロボットの開発といった“医理工連携”で医学の領域にコミットすることに大きな可能性がある。

「単科医科大学でそういう理想を持っているところがあれば連携したい。他学部と連携した新しい形の医学部を作ることに早稲田は貢献できるのではないかと考えています」(田中総長)

 すでに連携が始まっているのが、東京女子医科大学だ。早稲田と同大学の医理工の連携の拠点である、先端生命医科学センター(TWIns)の柴田重信センター長はこう言う。

「人工心臓の研究開発をはじめ、早稲田の理工学部には医療用ロボティクスや材料系の研究の蓄積があります。研究開発はもとより、医学的知識もあるエンジニアが医療現場に入っていけば、もっと有効な医療が実現すると思います」

 現在の医療は様々なテクノロジーによって成り立っている。患者そのものの診察はできなくても、医理工連携でそういった部分に貢献するのが早稲田の考えだ。

 2016年には早稲田大学校友の医師らからなる「稲門医師会」が設立された。現在約400人の会員がいるという。会長で、はとりクリニック理事長の羽鳥裕さんはこう言う。

「主な活動は交流と『稲門医学会』という学会の開催です。早稲田の現役学生さん向けに、『早稲田出身の医療人発・社会と医療』という講義も受け持っています」

 逆に「早稲田はいるのに慶應はいない」のが、正月の箱根駅伝だ。

 慶應は早稲田とともに20年の第1回箱根駅伝に出場した4校、「オリジナル4」の一つ。総合優勝の経験もあり、応援歌「若き血」でも「陸の王者慶應」と歌われている。しかし近年では、94年の第70回大会以降、箱根駅伝の本選には出場できていない。

 伝統校・慶應の苦戦の背景には何があるのか。「箱根駅伝の戦術に関する一考察」などの論文がある中央学院大学駅伝部の川崎勇二監督(57)はこう語る。

「慶應はいわゆるスポーツ推薦がなく、高校で実績のある選手も、AO入試か一般入試で入るしかありません」

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