なぜ、そこまで本気になるのか。その答えをはかるヒントは、今回の取材で聞いた桑田さんの次の発言にあるように思う。

「ユニフォームに袖を通してからずっと高校時代の野球を思い返していた。野球のおかげでいい高校時代を過ごさせてもらった」

「野球部の伝統にはいいところも悪いところもある。全てが悪かったわけではない。休部に至ったのは我々OBの責任でもある」

 結果がどうであれ、できる限りのことを最後までやり抜く。粘りの野球を誇ったPLらしさをOBたちがもう一度グラウンドで示すことで、野球部復活に1%でもプラスに働くなら、と強く願っている。少なくとも、すっかり体型の変わった元高校球児たちが必死に野球に打ち込む姿には、高校生を励ます力がある、そう桑田さんは信じている。

 励ます一方ではない。OBたち自身が、高校野球を離れてのちにそれぞれの持ち場で悲喜こもごものさまざまな経験をしている。

「社会的に問題となるような事件を起こした仲間のリセットを願って、マスターズ甲子園に連れてきた学校もありました」

 そう言うのは、前出の神戸大の長ケ原教授だ。人生の曲折で後悔や傷を抱えた人たちが、もう一度野球を通して人生を立て直すきっかけを手にする場所にもなり得る。

 PL野球部のOBと言えば、かつて桑田さんとともに甲子園で活躍し、KKコンビと言われた、清原和博さん(52)だ。清原さんは、2016年に違法薬物所持により逮捕され、現在は薬物依存の治療中だ。PL学園OBチームがマスターズ甲子園全国大会の舞台に立つとき、あの清原さんは参加しないのだろうか。

 マスターズ甲子園は、人生の成功者のためのものではない。むしろ、人生のなかで転んだりぶつかったりしてきた人たちが、野球を通して人生を再スタートさせる場所だ。だからこそ、清原さんがこの舞台に立つ意味があるのではないだろうか。

 PL野球部、そして、その華々しいスターであった清原さん。二つの復活を願って――。PL学園野球部OBチームは11月、マスターズ甲子園全国大会の舞台に立つ。(ライター・三宅玲子)

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