AERA 2019年9月9日売り表紙に登場した俳優・小栗旬さん
AERA 2019年9月9日売り表紙に登場した俳優・小栗旬さん

 主演作「人間失格 太宰治と3人の女たち」の公開を控えた俳優・小栗旬さんがAERAに登場。ハリウッド進出など挑戦を続ける小栗さんが、役者としての活動にかける想いを語った。AERA 2019年9月16日号から。

【写真】小栗旬も目指す?役作りで20キロ増量したクリスチャン・ベール

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 迷いのない表情でカメラを見つめる。撮影の合間は、目元をくしゃっとさせてスタッフと笑い合い、なんだか楽しそう。どんなときも小栗旬のまわりには人が集まり、ポジティブな空気が流れているのだろう、と想像する。

 映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」で、あの太宰治を演じた。

「とことんクズだなって思います(笑)」

 そう口にするほど、自己中心的な愛に溺れるダメ男だ。けれど、小栗演じる太宰は不思議と憎めない。

「太宰に関わった女性たちの自立が描かれていることもあり、映画を観た女性に意見を聞いても『不快じゃない』と。太宰がなぜこんなにも愛されていたのか、想像することしかできない。でも、自分がつくったキャラクターはなんとなく説得力を持たせることができたのかな」

 病魔に侵されながらも、家族と向き合う物語の終盤に向け、体重を10キロ以上も落とした。「30代に入ってからは、あまり役を引きずらなくなった」と言うが、このときばかりは精神的につらくてたまらなかったという。

 来年には出演したハリウッド映画も公開予定だ。大きな挑戦に思えるが、意外にもこう口にした。

「20代の頃は映画を撮ってみたい、もっと舞台に出たいと、やりたいことがいろいろあったけれど、役者としてはほとんど実現できたと思っていて。だからもう、挑戦以外にチョイスがない、というか」

「新しい扉が開き始めている」と言う。

「海外での仕事が増えそうで、ちょっと楽しみなんです」

 演じる役との向き合い方に話が及んだとき、何げなく例として挙げたのは、徹底した役づくりで知られるクリスチャン・ベールの名だった。小栗はきっと私たちが思うよりもずっと遠い場所を見つめている。(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2019年9月16日号