だが、内田さんは指摘する。

「例えば、換気口が1カ所でも閉められなかったら、そこから水が浸入する。大水害時には、想定外のことが起こりうると考えておかなければいけない」

 ここまでは地下駅の話だが、地上駅についても、北千住、北赤羽(北区)、浮間舟渡(北区・板橋区)、鐘ケ淵(墨田区)、堀切(足立区)、牛田(同)など12の駅は5メートル以上の浸水深が予測され、とりわけ注意が必要だ。

 洪水以上に内田さんが危惧するのが、津波による線路や駅の浸水だ。

 横浜では、江戸時代初期に発生した大津波を伴う慶長型地震が起きた場合、地震発生から約1時間半で最大で2メートルの津波が横浜を襲う。それによって、JR東海道線と京浜東北線、それに京急が並走する鶴見-新子安-東神奈川間が、1.2~2メートル浸水するという。横浜の場合、高架でない線路が多いため、津波による浸水リスクを主に駅間で示した。28の鉄道の駅間と、みなとみらい線の馬車道など地下の6駅に浸水リスクがある。

 名古屋と大阪は、南海トラフ大地震による津波の影響を見た。名古屋は名鉄常滑線の大同町(名古屋市南区)、柴田(同)、名和(東海市)などで2メートル以上、大阪はJR桜島線のユニバーサルシティ(大阪市此花区)で3メートル以上などで、主に海岸近くの駅が浸水する。名古屋では計39駅に0.3メートル以上の、大阪では計46駅に1メートル以上の浸水リスクがあった。

 JR東海道線を管轄するJR東日本によれば、 

「大地震による津波到達予想時刻まで余裕がない場合は、原則その場で停車させ、『津波注意区間』内に在線している列車の乗務員、駅社員は速やかにお客さまの避難誘導を実施します」 

 だが、JR東海道線を走る湘南新宿ラインは、15両編成でラッシュ時は2千人近い乗客が乗っている。内田さんは、これだけの乗客をわずかな乗務員や駅員で、短時間で避難誘導できるのかと疑問を示す。 

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