浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
(代表撮影)
(代表撮影)

 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

*  *  *

 今年のG7サミット、すなわち主要7カ国首脳会議が終わった。8月24日から26日にわたってフランスのビアリッツで開催された。今度はトランプ大統領が何をやらかして、どうもめるのか。物別れに終わったらどうするのか。様々な臆測が飛び交ったが、結局は何とか無難に閉幕した。

 それについては、議長国フランスのマクロン大統領の頑張りが評価されている。確かに、サプライズゲストとしてイランのザリフ外相の飛び入りを演出し、米・イラン間の二国間協議に可能性を開いたのは、なかなかのパフォーマンスだった。アマゾン川流域の熱帯雨林火災について、G7としての消火支援を打ち出し、これに対してトランプ氏が声高にブーイングすることを回避できたのも、かなりの手腕だったといえるだろう。マクロンさんは、あこがれのドゴール将軍をまねした大言壮語がうっとうしい。だが、存外にまめで、汗をかくことをいとわないようである。

 これはこれで結構だ。今の世界は、安泰のために労を惜しまぬ働き手を大いに必要としている。たとえ自分のための点数稼ぎの目論見が少々先行していようとも、協調実現のために奔走する人の存在はひとまず貴重だ。

 ただ、今回の会合に関する報道を見聞きしながら、改めてつくづく思った。G7のGは何のGだろう。むろん、公式にはグループのGだ。だが、実態的に見て、G7はどこまでグループなのだろう。今回のサミットも、マクロン大統領は確かに精力的に走り回っていた。だが、どうも単独走の色合いが濃厚だった。他の面々は、それをもっぱらぼーっと眺めているばかりであるように見えた。一丸となって目標達成を目指す仲間。連帯感とともに突き進む同志たち。そのようなグループ感が、今回はことのほか希薄だったように思う。

 G7のGは、「グッド」のGがいい。聖書に出てくる「善きサマリア人」のイメージだ。善きサマリア人は、行き倒れとなった人を惜しみなく助ける。他の多くの人々が見て見ぬふりをして通り過ぎる。だが、善きサマリア人はとことん面倒をみる。G7かくあるべし。善き7人衆であるべし。ちょっと無理か。

AERA 2019年9月9日号

著者プロフィールを見る
浜矩子

浜矩子

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演

浜矩子の記事一覧はこちら