※写真はイメージ(gettyimage)
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 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

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Q:孫が生まれてから、実母がたくさん物を買い与えてくれます。着られないほどの洋服、母乳で育てたいのにミルクなど。大切にしたい一方で困っています。必要な時はお願いするから、と話をするのですが……。何かいい声かけはないでしょうか。(女性/会社員/31歳/おうし座)

A:少し遠回りな話をしますが、僕は、人間って生きていくうえで、「期待に応えない練習」がすごく大事な修業の一つだと思うんですね。

 両親の期待に応えたり上司の期待に応えたり、それを100%守り抜いていくと、どこかでどん詰まりになって爆発します。そうすると相手にとっても自分にとっても困る事態になっちゃう。期待に応えないというか、人をちょっとだけ失望させる練習って僕は必要だと思うんです。

 だからこの質問にはっきりと答えると、心苦しいのですが、「寄付するか捨てましょう」になります。例えばお母さんは洋服をプレゼントしたら写真を送ってくれることを期待しますよね。お母さんに「前送った洋服どうした?」って聞かれて、「そこまで好みじゃないから人にあげちゃった」って言ったら、当然お母さんを傷つけます。でもその「傷つけること」が、僕は大事な気がしているんです。

 今、傷つけることを異様に怖がる文化があるように思います。期待を裏切れないとか、倒れてでも上司の期待に応えるとか。そうやって何でも引き受けてしまうと、自分が大事にしたい世界観みたいなものがどんどん侵食されていきます。特におうし座は、自分の半径5メートルの世界が本当に大事な人たちです。そこに自分の好みじゃないものが入ってくるのは、直接的なストレスになります。

 期待を裏切る練習って、具体的にどういうことか。例えば同僚とランチを食べに行く時に、天ぷらを食べるとします。僕とかは、だいたい食べたい物にブームがあるので、揚げ物ブームがくると翌日も天ぷらでOK。でも絶対「え、また天ぷら?」って相手から言われるわけです。そこで相手の期待に応えて「そうだよね、今日はお蕎麦にしよっか?」ってお蕎麦を食べても、全然おいしくない。

 実は僕もこないだそうやって一つ克服しました。「ここはいかせてくれ。今日も天ぷら食わせてくれ」って。

 期待に応えないと言っても、やっぱりコミュニケーションなので、いらないと伝えつつ誠意を込めて謝りましょう。「ごめんね、この服は私の好みとは少し違って」って。お母さんにとっては孫が生まれたっていう一大イベントだから、その祭りには絶対参加したいはず。そこは何割かは引き受ける必要があります。でも祭りのプロデューサーはあなたです。お母さんは協賛企業。協賛企業が持ち込むものが会場にふさわしいかどうか、プロデューサーが選別してもいいと思うんです。

AERA 2019年9月2日号

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しいたけ.

しいたけ.

しいたけ./占い師、作家。早稲田大学大学院政治学研究科修了。哲学を研究しながら、占いを学問として勉強。「しいたけ. 公式サイト」では月刊占いやコラムを連載中。 https://shiitakeofficial.com/

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