(図1)男女合格率の比較。X軸が過去、Y軸が今年の合格率比率である。1より大きくなると女性より男性の合格率が高い。X=1, Y=1に近いほど男女における合格率の差が少ない大学ということになる(図/筆者提供)
(図1)男女合格率の比較。X軸が過去、Y軸が今年の合格率比率である。1より大きくなると女性より男性の合格率が高い。X=1, Y=1に近いほど男女における合格率の差が少ない大学ということになる(図/筆者提供)
(別表)2016~18年の入試で男性優位だった大学のリスト(図/筆者提供)
(別表)2016~18年の入試で男性優位だった大学のリスト(図/筆者提供)
濱木珠恵医師
濱木珠恵医師

 東京医科大に端を発する医学部の不正入試問題発覚から、およそ1年が経過した。今年6月末には文部科学省が「不適切」と指摘した10大学について今年度入試の結果を公表し、多くの大学が「改善した」との評価を受けた。しかし、ナビタスクリニック新宿院長の濱木珠恵医師は、2019年度入試の結果をみても「多くの大学は男性優位を続けている」と明かす。

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 大学病院で不祥事が相次いでいる。対応もいただけない。降圧剤ディオバン事件では、5つの大学病院で利益相反の隠匿、データ捏造や改ざんなどが指摘され、該当する論文は全て撤回された。この事件で、大学からの処分を受けた医師がいる一方で、千葉大学で責任者をしていた人物は、そのまま東大の教授職を続けている。

 同じように白血病治療薬の医師主導臨床研究においても不適切な行為が行われていたが、責任者の教授に対する東京大学内での処分は曖昧だ。

 東大医学部を卒業した優秀な人物でも、こんなことをするのかと思った。研究不正も問題だが、それ以上に、その過ちを認め、正していくことこそ重要なのに、そこを有耶無耶にしてしまう。タチが悪い。『白い巨塔』と揶揄されるのも仕方ない。

 昨年、東京医科大学が入学者選抜で、女子学生の入学数を極端に抑えていた問題が発覚した。この行為が許しがたいのは、誰かを優遇したからではない。意図的に不特定多数を貶める不正行為だからだ。実力による絶対評価と信じられていた入学試験でこのような悪意をもった操作が行われていることに多くの受験生が戸惑ったはずだ。

■入学者選抜で行われた「女性差別」

 その後、文部科学省が行った調査では、女性合格者を減らすような点数配分を行った4大学(東京医科大学、順天堂大学、北里大学、聖マリアンナ医科大学)を含めて、少なくとも10大学(上記に加え、神戸大学、岩手医科大学、昭和大学、日本大学、金沢医科大学、福岡大学)で不公正な入学者選抜が行われていた(または疑いがある)ことが指摘された。一方、残りの71大学では不適切な事案はなかったとされた。

 この調査は、どこまで信頼すればいいのだろう。冒頭でも紹介したが日本の医学部は「しらばっくれる」。

 上記の調査報告には興味深いデータがある。男性の方が合格しやすいのは、問題を指摘された大学に限った話ではない。男女の合格率を比較すると、2017年は81大学中46大学(57%)、18年は57大学(70%)で男性の方が高かった。全大学における、2013~18年の男女の合格率(男性合格率/女性合格率)の平均は1.18倍。

 文科省も問題意識を抱いたようだ。今年の6月25日には、問題の10大学の改善状況を調査して、その結果を報告した。女性差別を認めた4大学では、男女の合格率の比率があきらかに変化していた。

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男女の合格率の差は他学部でも?