吉井:全曲先にやったから、ツアーは楽になったよね。

 現在のツアー「GRATEFUL SPOONFUL」では、スペード、ハートなどトランプのマークを名付けた4種類のセットリストを演奏している。

吉井:試聴会もだけど、これもさらにおもしろくしていこうという挑戦状なんですよ。みんながやりたいけど、やらないことをする。ぼくらも大変だから本当はやりたくなかったけど、やることによって「できるじゃん」って自信になるし、お客さんも「また行こう」と思ってくれる。ぼくらも50代なので、どこまでフレキシブルにやれるかなとも思うけど、この中年たちが苦しんで挑戦していく姿を見せていくのが、大きなテーマだと思っているんです。ただ得意なことだけやってるんじゃなくてね。

アニー:これまではライブを重ねて、メニューのペース配分やパフォーマンスを育てていくのが好きでした。だけど、それはもう使えない。毎回メニューが違うので、今までにない斬新な感覚です。明日「新しいメニューでやってみよう」と言われても、リハーサルなしでいけそうなくらい、体力がついていると思います。

 セットリストを相談しているのは、長年のスタッフだという。

吉井:昔はライブの曲は自分たちが、主にぼくが決めていましたし、再集結してからも最初はそうしていました。だけど、「老いては子に従え」というか。ベテランになると自分はこうだと主張する人もいるし、逆に若いスタッフのアイデアを取り入れる人もいる。いまのぼくらは後者。ぼくが仕切ると、目の前の起承転結を考えてやろうとする。だけど、スタッフはもっと長い時間をかけた起承転結で見ているから、その場で完結しないで次のアイデアが生まれてくる。任せたほうが楽しいんです。時々、「ここにこの曲か」と文句が喉元まで出かかっても、やるとじわじわくる。ぼくらじゃ考えられないことです。ぼくらは一生自分たちを客観的には見られませんからね。 

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