つまりはメリットもあればデメリットもあるのだ。なのに、お国が先頭を切ってキャッシュレス社会を推進するのは、結局は売る側の都合であるように思える。客の情報を集めて意のままに動かしたいと。そうすれば日本経済が発展し、それがひいてはあなたのためにもなるかもしれないと。それならそうとハッキリ言ってほしい。その意見に賛同するかどうかは人それぞれである。

 あともう一つ違和感を感じるのは、昨今、現金主義を標榜していると、多くの人から「そんなことじゃ生きていけないよ」と注意されることだ。そのうち現金なんて使えなくなるんだから今から対応しとくべきだと。

 イヤその時はその時である。現金とて一つの幻想なんだから別の幻想に乗り換えるだけのこと。でも、みんながそっちに走ってるからとりあえず自分も走っとけというのは違うんじゃないか。最近こんなことばかり書いてるが。

AERA 2019年8月26日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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