AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
【「米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯」の写真はこちら】
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戦後、米軍統治下の沖縄。占領者の暴政に対し、不当逮捕などの圧力にも屈せず毅然と立ち向かい、大衆の圧倒的支持を得た政治家がいた。
瀬長亀次郎。立法院議員(現在の県会議員)や那覇市長、国会議員も務めたその姿を描いた「米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー」(2017年)の佐古忠彦監督(55)が、「人間カメジロー」をさらに掘り下げた新作「米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯」を制作、この夏公開される。
なぜ、再びカメジローなのか。1作目を観た観客から「なぜこれほど不屈の精神を持てたのか」「素顔のカメジローも知りたい」という感想をもらうことが多かった佐古さんは、230冊以上あるカメジローの日記を、もう一度丹念に読み返し始める。1作目の公開から半年後のことだ。
「家庭で彼にどんなことがあったのか、という目線で読んでみると、また違うカメジローさんの顔が見えてきました。奥さんのフミさんとの愛情あふれるやりとりなど、新たに知る深く広い世界が広がっていて、これはぜひ2作目を作りたい、と」
日記を、映像でどう見せるか。制作者として悩ましいところだったが、気づきもあったという。「肉筆の魅力」だ。
「幼い娘さんとのやりとりを記す文字は心なしか優しく。獄中で書かれたものは一文字一文字が丁寧だけど、多忙な那覇市長の時代のものは独特の走り書きだったり。『そのとき流れていた時間』が、より生々しく見えてくるんです」
一方で、演説で沖縄の大衆を惹きつけたカメジローの映像と音声も数多く紹介される。とくに国会における佐藤栄作首相(当時)との緊迫感あふれるシーンは見所。明かされる対決後の二人の秘話も含め、ああ、当時はまだ政治家に「重み」と「懐の深さ」が存在したのだ、と痛感する場面だ。
「映像が残っていない演説でも、カメジローさんは日記に、しゃべったことを書き残しているんです。彼が言葉を大切にしていたこと。そしてその言葉の『強さ』は、この映画で最も伝えたいものの一つです」